(有)ウッズは、両鴨阪地縁団体という二つの集落が所有する山を管理しています。面積は約40ヘクタール、一定の地域ごとに毎年契約を結び、20年かけて全体を択伐ができるような状態にしていく、息の長いお付き合いです。毎年2キロ程度、搬出に必要な道を付けていきますが、そこで重視するのは、昔、その山で植え付けや間伐を担った地域の方々が軽トラで山頂まで上がれるよう、できるだけ緩やかにすることです。それによって、施業の様子を見てもらい、自分の子供や孫達にも山の話をしやすくしようと言うのです。
この地域は柔らかい泥岩を含む複雑な地層で、重機で掘っていてもすぐ土質が変わるそうです。8年前の平成26年8月には豪雨災害があり、周辺で256か所もの林地崩壊が発生しました。今も、当時の支障木を片付けながら、崩落現場を避けて道をつけるのに苦心しています。そんな山であっても、道づくりの支障木を木材利用の方向性を示す指標木と呼び、所有者である地元の人々との協力関係を築きながら、丁寧な施業を行って価値を高めようとしています。
興味深かったのは、道づくりの際に伐った木や間伐材を自社で製材することで、品質を見極め、どこにどんな木があるかを把握し記録していることです。樹高や太さなどは、最近普及してきたレーザー計測などで調べることが可能ですが、木の質は実際に伐ってみなければわかりません。黒芯と呼ばれる焦げ茶色の木材は、水分を多く含んでいて乾燥に時間がかかります。それはエネルギーコストが余分に必要だということを意味しており、製材品にするより合板やチップにする方が合理的で、環境負荷も少ないかもしれないのです。明るいオレンジ色の材は見た目も美しく、良く乾きます。そのような材が採れる場所を把握していれば、6mの梁材が欲しいといった注文があった時、2か月もあれば伐り出して製材し、販売することが可能です。普通、道づくりを請け負う事業者が出た材の品質まで調査・記録することはありません。しかしそれを行うことで、より正確な資源量の把握ができ、木材の価値を上げられることは、目からウロコの体験でした。
基本的に皆伐はせず、補助金は道をつける時だけ申請するそうです。今は劣勢間伐を主としていますが、いずれは択伐で維持管理をしていけるよう、選木をしています。どの木を残したら5年後に価値が上がるのかを見極めるのに、樹高10m~15mの高さの太さがわかるようになるのが重要だそうです。つまり3番玉と呼ばれる部分がどの程度の価値を持つのか、そこが収支を左右するからでしょう。太らせたい木に光が当たるよう、その南側の木を間伐するのが原則です。伐った木をグラップルで掴む際にも、極力傷つけないよう大切に扱い、フォワーダーで運ぶ時にも、積んだ枝葉で道沿いの木を痛めないよう気を遣う、そういった丁寧な仕事が積み重なって、自分達の利益も、所有者に返すお金も増えていく、理想的な森林経営を見たように思いました。
ウッズの手法は様々な紆余曲折を経て辿りついたもので、恐らく今後も社会環境に合わせ、変化していくものなのでしょう。しかしそこには、山からお施主さんまで、関わる全ての人に対して誠実であろうとする姿勢、それが可能な事業規模を守るという、変わらない理念が貫かれているように思います。その思いを汲みつつ、人材の薄い他の地域にも広げていくにはどうしたらいいのか、多くの知恵を集めて挑んでいきたいと思います。
文月ブログ
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