文月ブログ

森と生きるために-丹波の森で設計図面から製材・伐採を行う(有)ウッズ①

木材はこれまで、山で伐採した時は誰が使うのかわからない、プロダクトアウトの商品でした。品質の担保も安定供給の体制も弱く、補助金の出る範囲でやればいいと考える人達がほとんどだったのです。それでは木材の価値は上がらず、山の維持管理ができないと考え、ウッドステーションの塩地会長は書籍「森林列島再生論」(日経BP)の中で、設計図書から逆算して製材・乾燥、その前の伐採を行うべきだと提言しました。更にそれを可能にする建築の技術を、世の中に広くオープンにしています。私は、考え方の正しさは確信できても、特に山側がそれを実現するには多くのハードルがあるだろうと感じていました。しかし、それを実際に行っている会社が、既に兵庫県に存在していたのです。
有限会社ウッズは丹波市の山あいにあり、年間の生産量はおよそ600㎥の小規模な製材所です。しかしこの会社のユニークなところは、付近の約40ヘクタールの共有林の維持管理を任され、道づくりや間伐で出た材を買い取って、所有する団体にきちんとお金を戻していることです。更に、住宅の設計図面を基に、どんな材がどれだけ必要なのかを考え、製材・乾燥のみならず、山での造材(丸太を短く切ること)にまでその情報を生かすことで、利益を上げていることに驚きました。
もとは、維持管理のために山から出てくる木材のうち、自社で建築に使えるものは年間150㎥程度でした、しかし、製材に詳しい能口社長自らが山で造材の指示をすることにより、使えるものが3倍の450㎥に増えたと言います。従来は、市場に出すため3m・4m・6mと決まった長さで切っていました。それが、建築部材の使用長に合わせて原木の長さと品質の基準を精査した結果、4.6mや5.6mでも良い場合があり、造材の選択肢が広がって利益率が上がったのです。前提として、木口の色や樹皮の様子から、製材した時にどのような部材が採れるか、品質の見極めができてこそ可能な方法だと言えるでしょう。
また一年半前には、これまで乾燥を依頼していた組合がその業務をやめてしまったため、低温乾燥機を自作しました。その後は中古のモルダー(製材仕上げ機)も購入し、運送や加工コストの低減によって、更に利益を上積みできているようです。
山を資源庫とし、需要に応じて伐採・製材・乾燥させる場合、乾燥工程がネックになるのではと、私は懸念していました。多くの場合、同じ太さ・長さの柱や板を桟積み(風通しを良くするため上下に桟木を挟んで積み重ねる方法)し、重量で変形を抑えながら長期間乾燥庫に入れて置くのが一般的な乾燥方法だからです。しかし、45℃程度の低温乾燥なら、人が中に入って部材の出し入れをしても、庫内温度はすぐ元に戻るそうです。通常は同じ太さの材を乾燥庫に入れますが、断面の大きい梁は1か月置いておく、場合によってはそのようなコントロールも可能なのだと知って、私はとても勇気付けられました。
製材所では、大工さんが番付を木材に記入していきます。これをすることで、プレカット工場ではこちらが指定した向きで木材を加工してくれるそうです。更に、取引先によっては手刻みの加工も行い、販売価格を上げています。
「量を追うのではなく木材の価値を上げる製材」それは山主にできるだけ多くのお金を返し、お施主さんに高品質の住宅部材を提供する、その両方を満たすための均衡点を探りながら生産計画を立てることによって実現されています。課題は能口社長のような幅広く深い知識を持った人材を、今後どう育成するかでしょう。教育制度なのか、AIなのか、様々な可能性を探っていくことになりそうです。
明日は、山の価値を上げる管理の仕方についてお話します。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP