「住宅が建たないから、市場で木が売れないんだと思ってました。違うんですね。」これは最近、都市部の木材市場で働く男性から聞いた言葉です。恐らく、住宅に使う製材品は地方の製材工場から直接プレカット工場に向かい、そこで加工されて建築現場に納品されるので、都市部の木材市場を経由することはほとんど無いでしょう。一方、人口減少で住宅の着工件数が減るというのも、ずっと言われ続けていることです。確かに将来は減少するでしょうが、今現在はどうなのか、確認してみようと思いました。
国土交通省の統計で、2021年度の新規住宅着工戸数のデータをみてみると、昨年度の木造住宅着工戸数は全国で50万戸を超えます。構造別に集計された表には、一戸建て・長屋建、共同住宅の区分ごとに、戸数と床面積が表示されています。県別の傾向を掴みたかったので、建て方は一旦無視して、木造住宅の合計数値を抜き出し、人口比を出してみます。すると、とても興味深いことに気づきました。鉄筋コンクリートなどを含む住宅全体では、一人当たりの戸数が島根県で0.0041、東京都では0.0096と倍以上の開きがあるのに対し、木造住宅の戸数は島根県も東京都も0.0033と全く同じなのです。住宅全体の一人当たり戸数を順番に並べた時の、最も少ない5県と、多い5府県を下記に記します。
県名 人口(千人) 全体戸数 一人当たり戸数 木造戸数 一人当たり木造戸数 木造率
島根県 671 2,770 0.0041 2,240 0.0033 80.9%
徳島県 720 2,973 0.0041 2,354 0.0033 79.2%
高知県 692 2,907 0.0042 2,177 0.0031 74.9%
秋田県 960 4,182 0.0044 3,484 0.0036 83.3%
青森県 1,238 5,398 0.0044 5,007 0.0040 92.8%
・
・
熊本県 1,738 12,956 0.0075 8,936 0.0051 69.0%
大阪府 8,838 68,657 0.0078 28,516 0.0032 41.5%
福岡県 5,135 41,628 0.0081 19,581 0.0038 47.0%
愛知県 7,542 61,293 0.0081 34,887 0.0046 56.9%
東京都 14,048 134,313 0.0096 46,120 0.0033 34.3%
地域には底堅い木造住宅の需要がある。このことは今回一緒に書籍を書いた塩地氏や高口氏も言っていることです。地方には、鉄筋のマンションは建たなくても木造住宅は建っていることがわかります。これを国産材に、地域の材にすることができれば、建設費は地域内で循環するでしょう。目指すものがはっきり見えてきました。
コメント