文月ブログ

森と生きるために-森林での放牧

昨日は馬の事を書きましたが、今日は牛を森で放牧する試みについてです。10年以上前になりますが、環境系のコンサル会社が中心になって、乳牛を森林で放牧し、採れた牛乳をブランド化して販売する試みがありました。牛が人工林の草を食べれば、必要な下刈りの労力を省くことができます。森を歩き回ることで足腰を鍛えた健康な牛が出すミルクを、その価値を認める人々に買ってもらえば、一石二鳥のビジネスにできるのではないか、そんな狙いがあったそうです。
普通の牛乳よりうっすら緑がかったミルクは、ガラス瓶に詰め、プリン等にも加工され、JRの主要な駅などで販売されて、しばらくは売れ行きも悪くなかったようです。しかし、人工飼料で脂肪分を増やすよう飼育された牛のミルクに慣れてしまった日本人にとって、いくら環境に良いと言っても、わざわざ高くてあっさりした味のミルクを買い続けるかと言えば、やはり無理があったのでしょう。しばらくして当初の事業地から撤退したと聞きます。
直接確認したわけではありませんが、恐らく販売面だけでなく、牛の森林での放牧自体も難しい問題があったのだろうと想像します。人工林の下刈りは、普通植栽後の5年~7年後くらいまで行いますが、その時期にはまだ杉や檜の樹高は低く、苗が牛に踏まれて傷ついたり倒れたりする事故が一定程度発生してしまいます。また宮崎県の諸塚村での調査によると、一頭の牛の放牧に約1haの森林が必要とのことで、条件に合う林地を継続して確保するのも簡単ではないでしょう。柵の設置や水の供給など、生き物を山の中に放つことで生じる様々な問題を中々クリアできなかったのではと思います。
一方、栃木県那須町では、「森林ノ牧場」という会社が林の中で牛を放牧する酪農を行い、成功を収めているようです。経営者は、日本の7割は森林で、牛は草を食べてミルクを作り出す能力を持っているのに、なぜわざわざ人工飼料を与えるのかという単純な疑問からこの事業に取り組んだそうです。森の主体はクヌギやコナラなど、元は薪炭林だったところのようで、牛達が美味しそうに草を食む姿を間近で見ることもできます。経済合理性に叶う経営を目指した結果、牛の姿に癒されると観光牧場としても人気になっているのです。お洒落なカフェを併設し、新鮮なミルクを使ったソフトクリームやスイーツを提供して、正に森を生かした畜産の6次産業化を実現しています。よく見ると、冒頭でお話したコンサル会社の商品と、ロゴが似ている気がします。もしかしたら、失敗の経験を生かして、那須で再出発をした結果なのかもしれません。(違っていたらごめんなさい)ここでもやはり、スモールサプライチェーンが鍵になっていると言えるでしょう。地域の自然を生かして豊かに暮らす術が、もっと広がって欲しいと思います。

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