文月ブログ

林業ビジターエッセイ-山長グループその3「貯木場と製材・プレカット工場」

伐採現場から運び出された木材で比較的良質なものは、山長の本社に近い貯木場に集められます。山長商店と山長林業の、合わせて7つの伐採班が伐り出した材を、熟練の仕分け作業者がフォークリフトに乗り、径級(太さ)や材質ごとに細かく仕訳けてそれぞれの山を作っていくのです。直径が40センチを超えるような太い丸太は梁桁用、20センチ前後の細い丸太は柱用、材質があまり良くないものは間柱やラミナ用、実際には更に細かい仕分けをして、ここで行先が決まり、生産量も記録されます。フォークリフトの素早い動きが、工場の生産性を支える地道な作業に黙々と従事する人の誇りを物語っているようでした。

良質の丸太は山長本社の敷地内にある製材所に運ばれます。梁桁用の太い丸太は、人が木目や色などを細かく見て、板材になる側面を落としながら、平角と呼ばれる長方形の断面に整材されていきます。他にもスピードや性能の異なる2種類の製材機があり、そちらはほとんど自動で柱材などを生産していました。私がこれまで見てきた他の製材所に比べ、自動化されている割には人が多いように感じましたが、それは製品を一本一本目視して、欠陥のあるものを除外する選別のためでした。山長材のブランドを守る、その信頼性を担保するためにかけている労力の大きさに、私が上棟で一目惚れした理由はここにあったのか、と感じ入りました。

プレカット工場では、梁桁用、柱用など一般的な4種類の加工機が動いて住宅に必要な部材を図面どおりにカットしていきます。この業界では後発だったと聞きますが、大工の手刻みの技を大事にして質の良い住宅を建てようとする人々と連携し、機械の共同開発を進めるなど工夫を重ねてきたそうです。二階の柱は強度を表すヤング係数が70以上、一階の柱は90以上など、より安全な家になるよう木を使い分けているのも特長です。そしてここでも、選別と検品が繰り返し行われていました。山長の顧客は関東を中心に全国に広がっており、何か不具合があってもすぐに代わりの製品を届けるわけにはいきません。一棟分の住宅部材の品質が確かで、間違いなく加工・梱包されているか、しつこい程の検品の連続でした。

山から住宅までの一貫生産、その強みは同時に、リスクを全て自社で引き受けることを意味します。そこに挑み、高いレベルの信頼を維持するための努力は、並大抵のものではなかったと想像できます。まして、山の伐採現場にはバイオマスに行くしかない低質材も多く、全ての丸太が使えるわけではありません。自然の恵みを最大限生かしながら、森の維持に必要な収益をどう確保するのか、その一つの答えが、次にお話する「Yamcho Smart Sowmill」(YSS)の立ち上げだったのだと思います。

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