文月ブログ

森を巡る旅-文化遺産を未来につなぐ森づくり会議

岐阜の林業寺子屋を落第した後、私は自分に合った貢献の仕方は何なのか、模索していました。林業塾がきっかけで入会したFSCジャパンの活動も続けていましたが、もう一つ、速水社長のご縁で関わることになったのが、「文化遺産を未来につなぐ森づくり会議」です。当時は「文化遺産を未来につなぐ有識者会議」という名称で、私のようなド素人はお呼びでないと思いましたが、専門家であることが入会の条件ではなく、会の趣旨に賛同する人には広く門戸を開いていると聞き、参加しました。

この会は、一級建築士の資格を持つ女性が中心となって、文化遺産の建て替えや大規模修繕に必要な大径材(太い木材)を確保するため、森林を「文化遺産の森」に登録してもらうことを推進する団体です。京都仏教界の支援や、神社本庁の協力も得て、大径材を育てようと山主や企業に働きかけをしています。

日本の林業では、50~60年経過した森は伐採して苗木を植えなおすことが推奨されてきましたが、それでは文化遺産の修復に使えるような太い木にはなりません。また、針葉樹だけではなく、欅などの広葉樹の巨木は更に入手困難です。この会では、超長伐期施業と呼ばれる、メインの木を長期間伐らずに育てる育林方法を進める森や、80年生以上なら1本の木でも、「文化遺産の森(または木)」と宣言して登録した人や企業に感謝状を贈ることを通じて、社会にその価値や意義を広めようとしているのです。

学者や寺社仏閣を手掛ける宮大工、山主、林業関係者など、100人を超える人々が集まり、文化遺産のための森づくりという、長い時間のかかる取り組みを支えています。コロナの前には、セミナー開催の他、伝統的な林業地や文化財の大規模改修現場など、様々な場所への研修旅行も実施していました。特に文化財建築の修繕は、普通の人が現場に入ることは非常に難しく、この会の主旨を汲んで特別に許可されたもので、貴重な体験でした。

しっかりと手入れをしてきた山があり、現在の低い材木価格では売りたくない、という山主さんがいらしたら、「文化遺産の森」に登録して未来に宝を遺すというのはいかがでしょうか。

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