高校で林業を教える先生に出会った。林業大学校のような専門教育機関ではない高校で林業を教える教諭というのは、その方の県では一人だけ、最も多い北海道でも13人、全国でも100人程度しかいないらしい。その方の学校は、昔は地方に沢山あった農林高校の一つで、今は農・食・環境といった分野の学科に再編されて存続しているようだ。
その高校では、一年目は農業や森林・環境といった幅広い知識を身に付け、二年次以降、希望者が林業について深く学んでいく。生徒達は、森林科学・林産物利用・森林経営について、レーザーを使った資源調査をはじめ、木材の生産・販売に至るまで、先端的な知識や技術に触れて、即戦力として社会に出たり、更に学ぶために進学したりする。
「今ある既存のシステム、現実の社会に何の疑問も抱かない生徒を、僕は世の中に送り出したくないんです。」と彼は真っすぐな目で語った。「志・視点・発想力」その3つをキーにして、自分で未来を掴みにいく、そんな生徒を育てたいと。聞けば、学校には演習林もあり、製材所とのつながりも深い。近隣には多くの住宅需要が存在する。そんな彼らなら、森林資源と建築を直結させる森林直販工場を成立させることができるかもしれない。
建築図面のPDFをアップすれば、必要な部材の詳細やパネル図までが瞬時にダウンロードできる、そんな技術の普及が間近に迫っている。それを住宅産業が持てば、これまでと同じように木材を買い叩くだけになるだろう。山側が使いこなせば、木材の価値を最大化し、住宅部品にまで高めて売ることができるが、果たして誰がその担い手になるだろうか、それが最も大きな課題だ。大人は既存顧客との関係を慮り、従来の慣習を変える事への抵抗が強いが、学生にはそれが無い。林業と同時に測量や機械操作など多様な分野を学ぶ彼らなら、大人が尻込みする住宅部品の製造も実習の一つ、大きな利益を得る出口がある事を実感できれば、林業に挑戦するモチベーションも上がるのではないだろうか。
考えてみれば、都市農業でも倉庫や作業場といった建物は必要で、少し山間地域に入れば畜産も可能だ。その際に、事務所も加工場も、豚舎・鶏舎も自分達で作ることができたら、参入のハードルはかなり下げられる。地元の木材を使った建築で、高校で学んだ卒業生の事業拡大にも貢献できるとしたら、最先端の技術を、最も使って欲しい人達に届けられる。
社会の現実を嘆いたり他人を批判したり、それだけでは何も変えることができない。先入観の無いフレッシュな頭と健康な体、そして志を持つ若者が現場で汗を流し、知恵を絞って、地域の森を宝に変えていく姿を見てみたいと心から思う。
コメント