文月ブログ

建築と地域材をAIが結ぶ日

先日、ウッドステーション株式会社が発表した概算AIについて、その使い方や計算結果を見せて頂く機会があった。ユーザー画面で施工予定日や地域を入力、防腐など仕様に関する項目を選択し、木材についても主な部位ごとに希望する材を指定した上でPDF図面をアップロードすると、数十秒でAIが画像解析を行い、見積書が表示される。既に何人もの建築家や工務店関係者が、その精度とスピードに驚き高い評価と期待を表明している。
しかし、材の選択肢は例えば梁ならベイマツかホワイトウッド、国産とのハイブリッド集成材で、国産無垢材は入っていない。同席した九州の林業関係者がそのことを尋ねると、塩地会長の答えは「全国どこでも流通し、同じ価格・品質の無垢材は存在しない」というものだった。今はまだ、施工エリアは運送費を算出するためのデータで、その地域で手に入る材料まで反映している訳ではない。
そう言えば、最近自宅近くで建設の進む木造3階建ての集合住宅を見に行った時、土台も梁もベイマツ、柱はスプルースの集成材なのを残念に思った。戸建てでない建物は構造計算が必要で、JAS取得率の低い国産材は選ばれにくいのだろう。首都圏の都市部は、海からやって来る木材がその大きな需要を満たす構図に変化は起きないかもしれない。
しかし地方都市は別だ。物流の2024年問題で、既に木材運送費が上がり、トラックドライバーの奪い合いになっている地域もあると聞いた。遠くに運ぼうとすれば競争に勝つのは難しい。すぐそばにある需要を満たす術に磨きをかければ、生き残る可能性は広がる。冒頭の概算AIが建築の世界を一変させる日は近い。その時、木材生産者は、自分達が供給できるエリアの木材仕様画面に地域材の選択肢と価格を反映するよう、ウッドステーションに働きかけてはどうだろう。そこには納期と品質を担保する責任が伴うが、それと引き換えに3か月先の需要という貴重なデータを得られるようになっていくはずだ。
建築需要と地域材をAIが結ぶ、そんな未来が姿を見せ始めた。

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