最初に購入したパソコンのメーカー名に「ベル」という言葉が含まれていたので、私は自分のメールアドレスにも「bell」を使うことにした。フランス語で美しいという意味で、電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルの功績や、聾者への教育に力を注いだその人格からも、響きの良い言葉だと感じてきた。調べてみると、アメリカで創業したそのメーカーは台湾の大手企業に買収され、独立した企業としては姿を消していたが。
およそ人が想像できるものは、大抵いつか実現する。大きく重かったパソコンのモニターは薄い雑誌ほどになり、カバンのようだった携帯電話は掌に収まる情報機器になった。それを自分の目で見て来たから、今はよちよち歩きの技術が成長する様子を想像できる。私の役割は、未来の姿をイメージして言葉で表すことだ。例えばこんなふうに。
オペレータ(AR『拡張現実』ゴーグルを装着):「次の目標はあの木だね?」
ティンバーベル(AIの仮称):「はい、10メートル先です。伐倒位置は下から15㎝、ラインを表示します」
オペレータ:(木を掴んで伐倒)「ヤング係数が120を超えそうだ。木口の状態もいい」
ティンバーベル:「そうですね。途中の虫食い部分を外し、3m25㎝、5m60㎝、30㎝、4m10㎝で造材します」
乱尺で径の太さも異なる原木は、それ自体が固有のラベルになる。製材所に運びこまれてスキャナーを通ると、どの木のどの部分だったかが復元される。そして強度や木目の流れなども計算し、設計図書から抽出した必要部材に合わせて自動で製材・印字・乾燥される。想定外の使用不可部分が生じれば、翌日以降の生産計画に反映すればいい。この時、人を助けるAIはランバーベル(仮称)かもしれない。
経営者:「この林分は材質予想との一致率が高いわね」
ランバーベル:「はい。95%が計画どおりで、不足分の追加生産もスムーズです」
経営者:「3か月後の受注枠を5棟分増やせるかしら?」
ランバーベル:「乾燥用チップの供給量と電力料金の予想価格から、3棟までが妥当です」
私の妄想から生まれたAIだが、名前を付けてみると脳内で生き生きと動き出すのに自分でも驚いた。これまで不可能と思われていたことも、今は日々進化する技術の組み合わせですぐに実現可能になっていく。ファンタジーは時に未来を現在に引き寄せる。それを実行するAI人材は意外と身近なところにいるかもしれない。彼らが林業・木材業界で叶えたいと思う夢、実現したい未来を提示するためにも、私は大きな夢を語り続けたい。
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