文月ブログ

ブナの森の再生③

ブナの稚樹は雪解け後に真っ先に葉を広げ、競争相手がいない初夏の間に一年分の栄養を蓄える。だからその後、伸びてきた草本に光を遮られても枯れることはなく、冬が来て雪が降ると、その下でまたじっと春を待つ。ブナの研究で博士合を取得された、長野県林業総合センターの小山育林部長のお話はとても興味深いものだった。
ブナの固い葉や枝の形状は、幹を伝って雨を自分の足元に集めるようにできている。だから根は浅く横に広がる。若木は深い雪に押し倒されても、春になると積もった雪をはねのけて勢いよく立ち上がる。豪雪地帯にブナ林ができやすいのはこのためだ。
ブナは幼い頃は独りでいるより仲間が欲しい。だから50㎝間隔で密植する。最初は成長が遅いが、15年ほど経つと人の背丈を超えるようになる。その後は周りとのつぶし合いが始まり、熾烈な戦いに勝ったものが更に大きくなっていく。最初の30年はひたすら耐え、競争を勝ち抜く消耗戦を闘い、実をつけるようになるのは50年も経ってからだ。通常の年はほとんどの実が動物に食べられてしまうが、4~5年に一度、大量の実を降らせ、その時に食べ残された実から多くの稚樹が芽生える。だからブナ林は、階段上の林齢の木で構成される。
こうしてゆっくりと、苦労して成長したブナの樹齢は300年にもなる。深い雪に耐えて育つ姿や、その実が多くの生き物を支えていること、夏の涼やかな木陰、堂々として動かぬ巨木、その全てが心に何かを訴えかける。運と努力と競争が奏でる交響曲、今も思い出すと体の奥底から響いてくる気がする。

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