文月ブログ

伐採跡地でかぶを栽培

皆伐跡地を焼き畑にしてカブを栽培する、そんなユニークな取り組みを知り、詳しく話を伺った。山形県鶴岡市の温海町(あつみまち)森林組合。事務職から山仕事・製材・運輸を含め30人で、年間約20,000㎥の木材を生産し、うち8,000㎥を自前の製材所で加工している。
特徴的なのは、皆伐跡地に火を入れて焼き畑にし、そこに「温海かぶ」という野菜を栽培していること。7月頃に下草の刈払いや、皆伐時に残った枝葉の天地返しを行い、8月中旬から下旬にかけて山焼きを実施。周囲に防火帯を作って炎症を予防しながら、斜面の上部に火を付けて火が下に燃え広がるよう、ゆっくり焼いていく。鎮火後に焼け残った枝などを片付けた後、雨が降りそうな日の前にかぶの種を蒔く。焼き畑で雑草の種が減り、土壌の栄養が増えるので、かぶは無肥料・無農薬で育ち、10月中旬頃から収穫が始まる。鮮やかな赤いかぶは漬物用として市内に出荷されるほか、徳川家にも献上され400年続く伝統野菜として、JAに卸したり個人に直接販売もされているそうだ。収穫がほぼ終わる12月初旬頃、斜面に少花粉杉のコンテナ苗を植えていく。かぶを作った後も、焼き畑による栄養素は残り、杉の成長に寄与するのだろう。
鶴岡市の補填もあり造林補助は100%。かぶの栽培は、収益そのものより、高齢化で作り手の減る伝統野菜を林業と結び付けて残していく、という意味合いが強いようだ。
皆伐面積は年間5~10ha、獣害も少なく恵まれた条件とは言え、皆伐後は10年間、下刈りなどの作業が発生する。山の作業班の年齢は較的若いが、募集をかけても新規採用が難しいのは他の地域と同様だ。
それでも、話を聞いたI氏の表情は明るかった。金融機関の助成を受けて森林資源のデータ化にも着手し、地域の経済とのバランスを取りながら、伝統野菜と林業という宝物をともに活かそうとしている。林業のあり方は本当に様々で、何と豊かな世界だろうと改めて思う。
(写真は温海町森林組合HP掲載資料より)

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP