「自分のやったことが目に見える仕事、それが一番いい」ある男性が、北千葉にある大型パネル工場を見学した帰りにそう呟いた。ちょうどその日はモデルハウスのお披露目会で、紀州材の柔らかな木目がシンプルな家具と調和した、ため息の出るほど美しい家を見た後で、私たちはその躯体を製造した工場を訪ねたのだ。
いつものように見学者に笑顔で対応しながらも、4人の工員のきびきびした動きは一瞬も止まることがない。彼らの仕事を見ていると、常に巻き尺で長さを測り、耐力面材を切って釘で打ち付けては厚みを測り、組み上げながら何度も対角線を測る、確認の連続だ。一棟一棟、全て異なる注文住宅、パネルの製作図に細かい仕様はあっても、その加工順まで書かれている訳ではなく、時にはせっかく打った釘を抜いてやり直すこともある。それを淡々とこなしながら、頭と体をフル回転させ、クリアランスゼロの精密なパネルを作っていく。
彼らは建物の上棟にも参加するから、製造ミスがあれば家が建たないことを知っている。工務店が施主を連れてくれば、どんな人が住むのかもわかる。だから決して手を抜くことはない。住む人を幸せにする家を作っているという誇りと自信、それが彼らの動きに現れる。
同じことはできなくても、この意味を伝え、多くの施主に届ける手伝いができたら、いつか彼らの仲間になれるだろうか。
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