文月ブログ

森と生きるために-森林列島再生論への道④「道程(後半)」

道程の前半では、建築の高口先生、そして木材と建築・生産システムの塩地氏、金融の松本氏について書きました。後半は山側の専門家、エネルギーの酒井先生、そしてサプライチェーンの寺岡先生についてです。

森林とエネルギーをつなぐ-酒井先生

私が酒井先生に直接お会いしたのは、椎野先生を囲む会食の席でした。酒井先生は森林利用学の専門家として東大で研究をされていて、椎野先生が20年以上前に立ち上げた「鹿児島建築市場協議会」という、事業者間の情報共有による競争力強化の先駆的な取組みなどを通じ、交流を持たれたのだろうと思います。現在もJAPIC(一般社団法人日本プロジェクト産業協議会)の森林再生事業委員会の委員長や、日本木質バイオマスエネルギー協会の会長など要職を兼任し、海外視察を含め精力的に活動されています。木質バイオマスは発電に目が向けられがちですが、本来は熱利用にこそ長所が発揮され、地域の森林の活用を下支えする、重要な産業です。酒井先生なら、無理のない理想的なエネルギー利用の在り方を示してくださるに違いないと感じました。そんな酒井先生は、直接お話してみると、謙虚な佇まいの裏に子供のような素直さと茶目っ気が伺われ、私はすぐにファンになってしまいました。「炎上するくらいでないと人は読んでくれませんから。」酒井先生の煽り言葉に、怖がりの私が執筆中どれほど勇気付けられたことか。聞けば若い頃には格闘技もなさっていたそうで、心技体のバランスが、今のご活躍を支えているのでしょう。今後も見守って頂きたい存在です。

森林とサプライチェーンをつなぐ-寺岡先生

寺岡先生とは木材団体で計画した事業の中でお名前を知り、仮想木材研究会のWeb会議で初めてお話をしました。九州大学で林学を学び、学位を取得された後、現在は鹿児島大学で教授をされていて、椎野先生とも親交がおありです。林業ICTに関する研究会の座長を務めるなど、この分野の第一人者として研究を続け、ご自身でも今年、本を出版されました。(ICT林業の最新技術 : スマート林業から林業DXへ/林業改良普及双書)

佐伯広域森林組合で実際にお会いした際は、見るからに温厚な紳士で、学生に向ける父親のような眼差しが印象的でした。しかし、書籍のプロモーションで先生との対談ビデオの撮影に臨んだ時は、立て板に水、その明快でよどみの無いお話ぶりに圧倒されました。整理された論旨に感嘆すると共に、論理が必ずしも通用しない林業現場の保守性・非合理さと向き合うことが、先生にどれほどの忍耐を強いてきたか、想像すると眩暈がしそうでした。実証実験で良い結果が出ても、その技術の導入費用を賄ったうえで確実に利益を上げられる仕組みは、林業の世界にこれまで無かったのです。今回の書籍で提起した事が実現したとしたら、最も喜んで下さるのは寺岡先生かもしれない。私はそんな気がしています。

筆者の皆様は、それぞれの専門領域の粋を集めた、美しい景色を見せてくださいました。私はそれに相応しい旅の案内ができるでしょうか。

次回に続きます。

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