文月ブログ

森と生きるために-西粟倉でのフォレスターギャザリング②

岡山県の西粟倉村で開催された「フォレスターギャザリング2022」において、より良い森林管理を、それを通じて地域の豊かさを実現したいと考える多くの人に出会えたことは大変幸せなことでした。ぼんやりとしかイメージできていなかった「ゾーニング」について、その手法や生かし方の一端を知ることができたのは大きな収穫でした。

一方で、もともと抱いていた素朴な疑問については、まだ誰も明確な答えを持っていないのだと確認した旅でもありました。具体的に言えば、ゾーニングの結果から生じる将来利益の偏りに対する合理的な解決策、そして補助金依存の問題です。

西粟倉村では、森林所有者1400人のうち約半数の700人と10年契約を結び、その私有林約1500haと村有林1000ha、そして百森社有林100haを合わせた2600haを、百森が作成した森林経営計画のもとで管理しています。間伐など森林整備にかかる費用は、補助金を除く部分に村の一般会計から負担金が充当され、原木の販売による売上は経費を差し引いて所有者に分配、残りは村の負担金に補填されます。所有者が必ず儲かる仕組みですが、問題は施業可能な面積です。毎年90ha~100haの定性間伐(立木の形質・形状や隣接木との関係を現地で確認しながら伐採木を選定する間伐方法)を行う計画ですが、それでは契約期間の十年の間に一巡することはできません。分配金で大きな収入を得た人がいる一方、10年預けたが何もしてくれなかったと、契約の延長を拒む方もいると聞きました。今はそれが全体のスキームを揺るがすような動きにはなっていないようですが、ゾーニングによって自分の所有地が木材生産林から外れ、あるいは森林整備の優先度が低くなると知った所有者はどのような反応を示すのでしょうか。

西粟倉村が地方創生支援事業補助金などを活用して作成した森林ゾーニングの基本マップと、それを基に策定された森林活用アクションプランがあります。それを読むと、ゾーニングの結果、環境林に設定された私有林は所有者と交渉して村有林化を進める、もしくは防災等の協定(皆伐制限等)を結んで管理等は村が行う、いずれかを選択してもらう方針のようです。しかし、言うは易く行うのは難しいものです。111ページに及ぶアクションプランを概観しても、すべきことは山のようにあり、この内容を10人程度の百森の皆様で遂行していくのは大変な苦労でしょう。更に、これらの計画が全て実行できたとしても、森林整備や再造林に補助金を必要とする体質からの脱却は相当先になりそうです。

「森林列島再生論」で紹介した木造大型パネル(私たちの製品|ウッドステーション株式会社 (woodstation.co.jp))工場の導入は、木材の価値を最大化する手法として、解の一つになり得るかもしれません。補助金への依存度を少しでも減らしつつ、小さくても豊かな経済圏を作って欲しいと思います。

西粟倉村の挑戦は、多くの優秀な人材を惹きつけてきました。百森の皆様は、ゴールの遠さと道のりの困難さを十分に理解しながら、笑って立ち向かおうとしています。その姿は各地から集まった参加者の目に、導灯のように映ったのではないでしょうか。彼らに心からの敬意とエールを、そして今回お会いした全ての皆様に感謝の気持ちを贈りたいと思います。

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