3年ほど前、兵庫県にあるNPO法人の主催する「木材コーディネイト基礎講座」を受講しました。この団体は10年以上前からこの講座を開催していましたが、場所が丹波市という遠方だったため、10万円を超す受講料と交通費・宿泊費の負担、そして休みを取る日程調整の困難さで諦めていたのです。この年は、初めて東京での開催が発表され、私はこの時を待っていたと、勇んで申し込みをしました。同じ考えを持つ人が殺到して定員オーバーになるのではないかと心配になり、申請書には、自分がいかにこの講座を受講したいと願っていたかを、熱い思いを込めて書いた記憶があります。結果的には、申し込んだ人は定員内に収まり、私は無事受講することができました。
座学の場所は、林業・木材関連のイベントで良く使われる、新木場駅から歩いて10分ほどのビルの一階でした。上階には木材・合板博物館が入っていて、合板用の木材の「かつら剥き」を見学することもできます。今年の募集要項を見ると、座学はオンラインが中心になっていますが、当時はまだコロナ前で集合研修が行われていました。
講座に集まった人々の顔ぶれは多彩で、実家が林業、森林組合に勤めている、という人もいれば、国家公務員、自治体職員、建築士、工務店、NPO、メディア関連、木材製品を扱う企業、そして私のように将来の仕事に生かしたい人など実に様々でした。共通していたのは、日本の森林を生かすために、実践的な知識を学び、経験を積んで、自分を成長させたいという思いでしょう。
講座は約半年にわたり、土日×3回の座学と一泊二日の現地演習が2回ありました。受講前に予習テキストで学び、毎回学習内容を振り返るテストが実施され、准木材コーディネイターの認定試験を受けるには、全ての講座に参加しなくてはなりません。仕事の都合などで受けられない講座があると、その部分を翌年以降に有料で受講して初めて、受験資格が得られるという厳しいものでした。実際に、毎年何人かはそのような再受講を経て試験に合格しています。講座と試験だけで取得できるのは「准」木材コーディネイターで、本格的な木材コーディネイターと認められるためには、実際に森林を建築や他の用途に使う際に、コーディネイト、つまり需要側と供給側、双方の利益になるような働きをして、それを申請し、審査を経なくてはなりません。
詳しい内容はここでは省きますが、森林と施業を巡る制度や現状、木材とその品質や製材・乾燥・グレーディング、木材の価格や取引、建築側との橋渡し、そういった事を細かく具体的に学んでいきました。特に印象深かったのは、やはり現地での演習です。
一回目は、座学の講師も務める方の所有する、埼玉県飯能市の森林での見学と木材の計量でした。私は昔、森の健康診断という活動で同じような調査をしたことがありますが、基本的な捉え方はそれに似ていました。もちろん、市民活動と違い、100円ショップで買える道具、という縛りは無いので、胸高直径や樹高を測るための便利な道具や装置がありました。
一定面積の中の木を数え、それぞれの直径や樹高を測り、曲がり具合や枝打ちの状況、「モメ」(風害を現す表皮の傷)などの有無を記録していきます。数か所を調査し、そこから算出した利用材積によって、その林分からどのくらいの木材が生産できるかを推定しました。また何本かは実際に倒し、玉切りして実寸を測りました。それは次回まで保管され、製材の木取り演習に使うのです。
飯能は古くから西川材の産地とされる地域で、秩父などに比べると木の成長が遅く、目の詰まった強度の高い材になるそうです。美しい秋の森での計量演習に続き、次は厳冬の製材演習が待っていました。
明日に続きます。
文月ブログ
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