造作材(ぞうさくざい)をネットで調べると、「建物の内部や外部の仕上げに使われる木材や取り付け材の総称で、室内空間のデザインや使い勝手を左右する重要な部材」だそうだ。具体的には天井、床、壁、棚、階段、窓枠、ドア枠、巾木、廻り縁、手すりなど、人の目に触れる部分や日常的に使う部分に用いられ、室内の統一感や快適性、機能性に大きく影響する材料だという。木造と言えば構造材の事が話題の中心になりがちだが、考えてみれば構造材は壁や天井に隠れ、住む人の目に触れないことがほとんどだ。人が木目の美しさや肌触りの良さを認識するのは造作材(内装材)によってなのだから、住まい手との関係では正に主役と言っても良いのに、実際は目立たず正確無比で当たり前、声高に主張することのない謙虚な存在だ。
正にそれを地でいくのが、埼玉県鴻巣市で木材加工業を営む木村司氏である。木村木材工業は明治38年(1905年)創業という業界の老舗で、顧客の細かい要望に丁寧に応える少量多品種生産を行っている。工場で主に扱うのは輸入のカナダツガだが、品質の低下と円安の影響をかなり前から予想し、国産のヒノキなどに代替する試みを続けてきた。工場では端材が約30㎝から4m超まで、10㎝ごとに40種類に仕訳され、材を効率的に使い尽くす工夫がされている。繊細に加工された部材は滑らかで艶があり、息を呑むほど美しい。
木村氏はまた、常に国内外の木材需給に目を光らせている。米国の住宅販売指数や欧州・国内を含む在庫の状況などから、木材価格の動向を予測する。アメリカの金利や住宅関連の実績数値、港湾労働者のストなど社会で起きる事象がどのように連動して木材価格に影響するのか、私も時に参考情報の提供を受け、勉強させて頂いている。
歴史ある企業を背負う木村氏の穏やかな表情には、自分に課せられた役割から決して逃げずに挑む人の静かな覚悟が滲んでいる。それはもしかしたら、木々が長年風雪に耐えて蓄えた年輪の尊さ、そこに価値を見出し、お金に変えていく仕事の中で培われたものかもしれない。
「国産材活用の道は構造材だけじゃない」と木村氏は言う。今氏が訴えているのは、大径化して価格が下がりがちな元玉部分を2.5mに造材し、国産シフトが進む2×4用材と造作材の取り合わせをする事だ、質の高い柾目が取れれば、製材所の利益も増え、造作材の国産化も進む。秩父で素材生産を行う会社も経営し、川上から川下まで、現場からグローバルマーケットまで広く目配りする木村氏ならではの提案だと思う。
構造材だけの家に人は住めない。造作材や下地材があって初めて、家は住まい手を受け入れることができる。在来木造の住宅部材は数万点にもなると聞く。それは木の命が暮らす人の快適さを生み出す部材に変わるように、先人が磨き上げてきた知恵の集積とも言える。ひたすら謙虚に快適な空間を司る、そんな存在に今後も心を寄せていこうと思う。
文月ブログ
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