未来へと飛躍する森林組合、それは既に従来の森林組合の概念を超え、成長エンジンとそれを支える人材の厚みを備えた、企業のような組織になっていました。
大分県で最も面積が広く、人口約68,000人の佐伯市、その約60,000㏊の民有林を管理する佐伯広域森林組合は、15年前に森林組合としては巨額の投資を行って大型製材機を導入しました。リスクを負ってもそれを決断したのは、地元の豊富な木材資源を生かし、森林を更新していくためには皆伐再造林が必要、そして製材まで自ら手掛けることで出口と利益を確保することが重要だという、組合長や起案者の強い思いがあったからです。しかし森林組合がそこまでやることに対する組織内の反発もあり、木材価格の低迷や、生産した製材品の販路開拓の難しさなど、茨の道と言って良い苦労の連続だったと聞きます。
しかし二年前、私が初めて佐伯を訪れた時に見たものは、そんな厳しさを全く感じさせない、おおらかで明るく、自然体でありながら挑戦する姿勢が浸透した、不思議なエネルギーでした。私はそれを「佐伯スピリット」と名付け、組合の人達は、外部の第三者が自分では気づかなかった組織の価値を見出して評価したことを、とても喜んでくれました。私のレポートは、佐伯の取り組みが広く世に知られるきっかけの一つになったかもしれません。
その当時問題になっていたウッドショックや、様々な社会の変化を経る中で、佐伯広域森林組合は今、全国からの視察依頼が絶えない、業界のトップランナーになっています。何より注目されるのは、組合の直営班が伐採した土地だけでなく、素材生産事業者が伐った跡地にも、組合がほぼ全て再造林を行っていることです。それに加え、伐採や造林に関わる作業員への好待遇が、稼げるという評判を呼んで若い従事者を惹きつけていること、山主さんに返す金額が、再造林費用を差し引いても1㏊当たり200万円近いという、十分かどうかは別としても全国的に見て高い水準であることなど、驚くような成果を上げています。
更に今年の6月、組合は2×4(ツーバイフォー)の大手事業者と供給協定を結び、多額の投資をして新工場の建設に乗り出すことになりました。2×4に使われる構造材は従来から海外産がほとんどでしたが、それを国産杉に置き換えていこうという挑戦を始めたのです。今回、約1年半ぶりに佐伯を訪れた私にとって、パワーアップした彼らの姿は嬉しい驚きでした。共販所、伐採地、苗木生産施設、バイオマスチップ製造現場、どこに行っても詳しくわかりやすい資料が配られ、説明する担当者の声には自分の仕事への誇りが感じられます。2か所だったバイオマスの販売先が3か所に増えたことで、生産・納入がより円滑になり、価格交渉力も高まりました。20万本だった苗木生産は30万本と1.5倍に、そして先述した新工場の敷地は着々と造成が進み、佐伯市のみならず、県も取り組みを支援しています。
佐伯広域森林組合が現在の隆盛に至った理由、それは地域の森林を守り抜くために、内外において闘い続けてきたからだと、私は思います。明日はその詳細についてお話しましょう。
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