再造林費用を価格に上乗せする今回の協定、ウッドステーション株式会社のプレスリリースにはこう書かれています。「本協定では、ウイングと佐伯森林は、再造林に必要とされる費用捻出を想定した木材価格で合意し、年間取引量は 10,000㎥以上と定めています。再造林に関わる費用や負担を透明化し、その応分責任を取引関係者で相互負担する仕組みづくりに着手します。」つまり、費用はあくまでも取引関係者が負担するのであって、消費者(施主)に高く買ってくれと言っている訳ではありません。先進技術の活用や大胆な生産・物流改革、そうした関係者の企業努力によって、これを成し遂げようとしているのです。
ここで大きな意味を持ってくるのが、価格が同じでも、確実に再造林がなされるとわかっている木材があるのなら、消費者はそちらを選ぶはずだという期待です。裏を返せば、今の国産材には「再造林」あるいは「持続可能な森林経営」を担保されたものと、そうでないものがある、その認識が広まらないと、このような協定が他の地域や企業に拡大していくのは難しいとも言えるのです。
多くの人に知って頂きたいのは、今の日本では主伐(一定の面積の木を全て伐採し収支を確定すること)後の再造林はわずか3~4割しかされていない、つまり残りはハゲ山のまま放置されているという事実です。再造林への補助金があっても、残りの自己負担を山主に納得してもらう労力、造林作業を担う人材確保の困難さなどを理由に、多くの事業体が再造林を行わず、林野庁も罰則を課していないのです。
一方で、建築側は国産材の裏事情に目をつぶり、都市部で木造ビルの建設を推し進めようとしています。更に先日岸田首相が打ち出した花粉症対策のような、実情を全く知らない思いつきの施策が進められれば、ひたすら伐採して後は放置し、木材価格の暴落とハゲ山だらけの国土が残るという結果になりかねません。
それをさせないためには、心ある人々が協力して、国産材に隠された真実を世に知らしめなくてはなりません。先ほど、国産材には「再造林」あるいは「持続可能な森林経営」を担保されたものとそうでないもの、という表現を使いました。「持続可能な森林経営」を担保しているのは森林認証です。中でも「FSC」は、定期的に第三者の審査を受け、その費用を事業者が負担するという信頼性の高いものです。欧米では環境保護の意識でFSCマークのついた木材製品を選ぶのがごく普通になっていますが、日本では中々普及してきませんでした。最近、SDGsが浸透するに従い、森を守る仕組みとしてようやく認知度が上がってきましたが、認証の取得や維持にかかるコストを価格に転嫁できないこともあり、認証林の面積が大きく拡大する状況ではありません。しかし今回、再造林型林業協定の締結者と森林認証関係者は、国産材の多くが実は環境破壊に加担しているという事実を世に広めることについて利益を共有しているのです。
森林認証には、コストがドイツの本部や審査機関に流れるビジネスだという指摘もあります。佐伯広域森林組合も、再造林を多額の補助金に頼っているのが実情です。しかしそれでも、健全な森林を維持する、伐ったら植えるという、未来世代への責任を果たすための具体的な行動をしていることは間違いありません。国産材利用を社会貢献と言うのなら、目先の利益のみを追う人々ではなく、このような責任ある人や企業から木材を買うべきだ、そういう考えが広まることで、日本の森林は保たれ、未来世代への確実な資産となっていくでしょう。私はそう信じて発信し続けます。
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