朝のテレビ番組で、地熱発電への取り組みが紹介されていました。昔から大きな潜在力を秘めていると言われながら、温泉関連事業者の反対などで利用が進まなかった地熱発電に、新しい波が起きているというのです。それを進めているのが、何と全国に約960のフランチャイズ店舗を展開する「業務スーパー」の創業者だそうで、気になって調べてみました。この方は、業務スーパーの社長を息子に譲り、現在は「町おこしエネルギー」という会社を作って、地熱だけでなく木質バイオマス発電にも取り組んでいるようです。
地熱の資源量は、日本はアメリカ・インドネシアに次ぐ世界第三位です。日本列島はどこを掘ってもいつかは温泉に当たりますから、これ自体は驚くことでもないでしょう。しかしこれまでは、温泉の湧出量が減る可能性があるという周辺事業者の反対や、リスクの大きい巨額の掘削費用から、中々実用化されてきませんでした。最近になって、蒸気だけを分離してタービンを回し、熱水は地下に戻すという技術が確立したこともあり、環境が整ってきていたようです。地熱貯留層を利用すれば、地球がボイラーの役割を果たし、設備の減価償却が終われば、何もしなくても24時間、安定したエネルギーを手にし続けることができます。一方、地下1000~2000メートルの世界で有効な生産井を掘りあてるのは難しく、成功率が10%程度、それ以外は数億単位の損失が出るというビジネスだそうで、株主の顔色を伺う上場企業は手を出しにくい分野だと言うのです。そのため、この方は新しい会社を作り、日本の将来のために化石燃料に頼らないエネルギー源を創ろうと奔走しているのです。
もう一つ、印象的だったのは、効率的な掘削機や地熱発電の設備を、独自に開発したということです。業務スーパーの成功のカギは、「本当に必要なものは自分達で作る」という姿勢を貫いたことにあったようで、例えばダンボール一箱分をまとめて入れられる深めの冷蔵ケースの開発などを行ってきたことが、地熱ビジネスでも生きているのです。櫓を組むだけで一週間以上かかっていた掘削作業ですが、自走式掘削機の開発により、調査費用が2億円から6000万円に下がったそうです。
安定したベース電源になり得るが、投資効果に大きなリスクを伴う地熱発電と、樹木の成長量に合わせて小規模な熱利用を進めるのに向いている木質バイオマス、この二つを相互補完させてはどうでしょうか。どちらも地方に立脚しますが、初期投資が大きくその後はメンテナンス要員のみとなる地熱発電に比べ、森林産業は投資額が小さくても継続的な雇用を生みます。目に見えない資源と、確実に目視できる資源との組み合わせで長期的に確実なリターンを生むビジネスを創れば、日本の将来は更に明るい炎で照らされることになるでしょう。
文月ブログ
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