文月ブログ

森と生きるために-遅すぎるツバメの子育て

昨夜、所用で訪れたJR総武線幕張駅の構内に続く階段で、ピーピーと鳴く声がする方向を見上げると、何とこの時期にツバメのヒナが巣から顔を出しています。親鳥も付近を飛んでいて、虫を捕えてはヒナに運んでいました。親鳥が近づく度に、3羽のヒナが一斉に細い首を伸ばして餌をねだる様子はとてもたくましく、時期外れという感じはしませんでした。
電車の中で調べると、日本のツバメは普通、4月から6月に卵を産むとあります。抱卵が約2週間、ヒナがかえってから巣立ちまで約3週間といいますから、8月中旬の今は、本来ならとっくに子育てを終えているはずです。巣立ちが近いようには見えなかったので、ごく最近、生まれた卵かもしれません。
更に調べると、幕張駅には毎年のようにツバメが巣作りをしていて、経過をSNSに投稿している人も少なくない事がわかりました。過去の投稿を見ると、通常は5月頃に営巣するケースが多いようです。中には継続的に調査・報告をしている方もいて、今年は5月に最初の営巣、6月下旬にヒナが巣立った後、再営倉して育てた2羽のヒナが、8月8日には巣立っていったとあります。巣の場所も、階段の壁だけでなく、より改札口に近い排気口の上にもあるようです。親鳥が同じ個体かどうかはわかりませんが、8月中旬の今、ヒナが育っているというのは、やはりとても珍しいことでしょう。梅雨が極端に短く、いきなり高温になった今年の気象が、ツバメの営巣に影響したのかもしれません。
池内了という方が雑誌ビッグイシューに連載している「市民化学メガネ」という記事の中で、ヨーロッパでは気候変動のせいで、花の咲く時期や虫の繁殖期と渡り鳥の飛来のタイミングがずれてしまい、子育てに苦労する種が出てきていると書いていました。一定の地域内で暮らす動植物は変化に合わせられても、地球規模で渡りをする鳥には対応できません。長距離を飛行してやって来たのに、いつもある花が咲かず、昆虫がいないとなれば、種の存続が危うくなってしまうでしょう。何が生態系全体に決定的な悪影響をもたらすか、それは誰にもわかりません。ごく目立たないある種の生き物の絶滅が、連鎖によって多くの生命の存続を脅かすかもしれない、その怖さを忘れてはならないと感じます。
8月のツバメのヒナは、無事に巣立ちを迎え、そして成鳥になることができるのでしょうか。能力のアンバランスに悩み、60歳を過ぎてようやく発信する力を得た自分の姿と重なり、祈るような気持ちで応援しています。

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