毎年購入しているカレンダーの8月は、青い湖の中にカラマツの枯れ木が並ぶ、ちょっと変わった光景です。枯れ木が湖の中に立っているのは、ダムの建設で水没したか、山が崩れて川をせき止め、一帯が湖になったものでしょう。上高地の大正池が有名でしたが、少しずつ倒れて、近年はほとんど無くなったと聞きます。アマゾン川流域では、毎年一定の期間、10m以上も水位が上がり、森が浸水することが知られています。樹木は水に浸かってもすぐに枯れる訳ではありませんが、その状態が長く続くと、やはり成長を続けることはできないのでしょう。
枯れ木は、森の中の生態系の維持に重要な役割を果たしています。鳥や小動物の巣穴を提供し、昆虫やコケ類・地衣類等の生息場所にもなります。人工林では、虫が増えて残った木にも食害が及ぶという心配、また作業の安全確保の観点から、枯死木を早く伐るべきだという主張もあるようです。しかし持続可能な森林経営を行っているかどうかを審査・認定する森林認証のFSCでは、森の中に一定の本数の枯死木を残すことが決められています。生物多様性の維持か、虫害の回避か、林業を営む方々には悩ましいところかもしれません。ドイツでは、古木や枯死木の状況を詳しく調べ、鳥獣の営巣木か、希少種の食痕があるかなどによって、区別して保護を行っているようです。枯れた後も様々な生命のゆりかごとなり、ずっと価値を持ち続ける。そんな樹木のように生きられたらと夢想する日々です。
文月ブログ
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