栃木県佐野市にある渡良瀬林産は2017年に工場の稼働を開始しましたが、事業の構想はその5年ほど前からあったそうです。当時、飯塚専務はエヌケーケーで集成材事業の再構築を行い、実績を上げていました。そこに、グループのオーナーであるコンチネンタルホームの廣澤代表から、流域の山を再生させる事業に着手するよう、言い渡されたのです。山のことを何も知らなかった飯塚氏は、できることなら逃げたいとまで思ったそうですが、須藤社長の後押しもあり、各地の製材所を見て歩きました。地域材を生かすことを考えれば、製材所が必要になりますが、2012年頃と言えば、毎年500社が廃業すると言われていた時期です。新しく作って、どうすればそれを成功させられるのか、飯塚専務は徹底的に考え抜き、地域の需要と供給、グループ全体や近隣事業者との連携も考慮して、最適なビジネスプランを作り上げました。そうしてできたのが、渡良瀬林産の最新鋭工場だったのです。
一般的に、機械メーカーは量の効率を追い求めます。担当者は、大きい機械、高い機械の方が、圧倒的に一本当たりの製造コストが下がる、価格競争上有利になると攻勢をかけてきます。しかしそれは、その分、余計に売らなくてはならないことを意味します。減価償却費の負担も増しますから、身の丈に合った設備を選ぶことは本当に大事で、しかしとても難しいのです。飯塚専務は、エヌケーケーの事業規模、コンチネンタルホームの販売量、近県の住宅需要など、様々な要素から逆算した生産量を基に、その規模に最適な工場を設計できる業者を探し出し、説得を繰り返しながら発注したそうです。バイオマスボイラーは、技師を必要としないタイプを選び、属人に頼るリスクも排除しました。
開業当初は、山から材がなかなか集まらず、苦労もされたと聞きます。しかし今や、買ってくれと材を持ち込む事業者が、今月はもう一杯だと断っても毎日電話をかけて来る、そんな頼られる工場になっています。
エヌケーケーが生産している集成材は、無垢の材とは違う、ある意味工業製品です。そして普通の製造業は、できるだけ在庫を持たず、作ったらすぐに売る、売れるものしか作らないのが当たり前の考え方です。これまでの製材業は、無垢材の価値という幻想に振り回され、それをいつ、誰が買うのかという現実から目を背けてきたと言えるかもしれません。飯塚専務は、集成材という工業製品の製造・販売を手掛けてきたからこそ、木材業界の慣習に染まらず、合理性を追求できたのではないでしょうか。
エヌケーケーの敷地内には、プレカット工場から集荷された端材が積まれています。長さは30㎝程度から、1m近いものまで様々で、JASの認証シールが貼られているものもありました。強度も乾燥もしっかりしているものを使うのですから、質の高い間柱が再生産できます。工場には日本語の他に、中国語とベトナム語のマニュアルが掲示され、工員の無駄のない動きと、丁寧な仕事ぶりが印象に残りました。
この会社には、CADデータの入力を行う部署もあります。人数は少なくても、受注状況から今後の資材の需要を掴むことができ、それを渡良瀬林産の原木仕入れや、何をどれだけ作るかの判断に生かしているそうです。
このように、企業単体の利益でなく、グループ全体を見通した経営判断ができること、それがサプライチェーンの最適化を生み、事業の継続を可能にしているのでしょう。そしてそれは、山の健全化にもつながるのです。
グループがこれから目指すこと、それを明日お話しましょう。
文月ブログ
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