山と生活者を最短距離で結ぶ「森林直販」の実現、そしてバイオマスへの安定的な燃料供給と併せ、山の価値を最大化して維持することを目的とするのが「森林連結経営」です。ではそれを実際に行うのは、どんな人達なのでしょうか。
森林組合は山主を構成員とする共同組織ですが、補助金に頼る運営が長く続いた結果、多くが採算ギリギリで運営されており、経営管理の手法も前近代的で不透明な組織がほとんどと言われます。森林GISやレーザー測量など先進的な技術を持ち込んで、提携や協働を提案したものの、けんもほろろに追い返されたという話をよく聞きます。自立できない状態は人も組織も萎えさせるのです。今はウッドショックで一時的に潤っても、長期的な体質改善に活かせるかどうか、見通しは明るいとは言えません。
自治体はどうでしょうか。残念ながら、行政が音頭を取って何かをしようとする時、そこには予算や利権の弊害が必ずつきまといます。どんなに意欲のある担当者も、2~3年で異動してしまいます。そもそも、森林や林業に詳しい専門職人材を常時雇用できる自治体は限られてもいます。だから、森林環境譲与税の配分が始まって3年経つ今も、多くの自治体が使い道を決められず、基金に積み増しをしてしのいでいるのです。
近年、高性能林業機械への補助金が手厚くなったことから、地域によっては素材生産業者が独占的な地位を得て、多額の利益を手にするケースが増えていると聞きます。昨年来のウッドショックでも、木材価格の高騰は山主の利益にはならず、素材生産業者の儲けになっているというのです。かつては森林組合に所属することが多かった伐採班ですが、立木を高く売りたい山主と、安く買いたい伐採者の間に利益相反が生じるので、分離すべきとされた経緯がありました。中には、チェーンソーの普及による白蝋病の多発などのため、切り捨てられて独立せざるを得なくなったという隠れた分断の歴史もあるようです。この人達が、真に山を愛し、自ら再造林にまで責任を持とうとするならば、担い手となれるのかもしれません。しかし、所有者や境界線の不明確を利用して、意図的に伐採届の範囲を超えた盗伐をする事業者もいると聞きます。GISによる稼働区域の捕捉と公開など、そのような悪事を許さない仕組みを作らないと、自分だけが儲かれば良いという人々の跋扈を止めるのは難しいでしょう。
プレカット・製材事業者・工務店や大工にも、大型パネル工場を手掛ける可能性はもちろんあります。しかし、彼らが中心になって、それで本当に利益を山に還せるのでしょうか。今までどおりの安過ぎる価格で木材を買い続けるなら、持続可能な森林経営は担保できません。利益を懐に入れてしまう悪質な輩はデジタルデータの供給を止めるといった規定で対処できても、山の当事者が関わらなければ、山への利益還元による森の健全性の維持を、継続的に行うことは不可能なのです。
大型パネル工場の導入で利益が生まれたとしても、現行の相場取引では、地域の他の事業者より高く買うということが、実質的に難しいという指摘もあります。ではどのようにしたら良いのか、改めて考えてみましょう。
明日に続きます。
文月ブログ
コメント