文月ブログ

森を巡る旅-国産材ビジネスセミナーその6「アウトプットの重み」

国産材ビジネスセミナーは、この業界における最新事情やキーマンを知ることのできる、効率的な学びの機会でした。しかし、初期に参加していたメンバーは実際に経営者となり、学びではなく実践のステージに上がっていきました。言い訳のできない、情け容赦のないビジネスの世界で生き残っていくためには、いつまでも同じ場所に留まっていてはいけないのです。
しかし私には、具体的な次のステージはなかなか見えてきませんでした。インプットは面白く、気楽なものです。お金を払ってセミナーに通えば、その対価としての情報や知人は増えていきますが、それだけでは、自分の血となり肉となる、真の意味でのインテリジェンスや人脈にはなり得ないことに気づいてもいました。自分でも何かしなければという思いから、木工品の手作りキットでワークショップを行うくらいのことはしていましたが、それ以上の活動には発展しなかったのです。
2012年頃から、SNSの隆盛を見越して、セミナーの主催者は受講者に、自身のブログを書くことを勧めていました。アウトプットするためには、常にアンテナを張り、得た情報を自分の中でかみ砕き、時間をかけて表現しなくてはなりません。その作業は自分と向き合い、高め、自分のメディアを持つことで従業員や顧客の心を掴むことにつながると考えたのでしょう。ブログのアカウント取得までしてもらったにもかかわらず、当時の私にはそれができませんでした。仲間の中には、当時から10年近く、頻繁にブログを書き続けた人もいます。社業の安定に伴って必要性が薄れたのか、コロナの影響か、最近ではあまり更新されていないようですが、その姿勢には敬意を惜しみません。
国産材ビジネスセミナーは、主催者が2017年を最後に終了しました。それまで受講し続けてきた私は、林業・木材業に関するインプットを、ネットの掲載記事や知人を介したイベントなどに頼るようになり、現在に至っています。
最近、私はようやく、このように毎日何かしらの発信ができるようになりました。その上で当時の自分を振り返ると、できなかった原因は必ずしも怠惰のせいだけでなく、自分の視点、つまり立ち位置が定まらなかったことにもあると思えます。林業・木材業の外にいて応援団であり続けるのか、中に入って当事者になることを目指すのか、そこがあいまいなままでは、何事にも自分の定見を持つことができません。あっちの人の意見も、こっちの人の言うことも尤もだと思えてしまうのです。
私は今、日本の林業や木材業を建設やバイオマスと連携させ、森林産業を目指すという立場で物事を考え、発信しています。応援団でありながら、林産業に厳しく自立と変化を迫ろうとしているのです。だからこそ、自分自身に対しても厳しく、質の高いアウトプットをし続けることを課しています。その意味を考えさせてくれた国産材ビジネスセミナーを、時に懐かしく思い出しながら。

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