私達が野地板を張った後で、専門の職人さんが屋根を鉄板で葺いてくれました。各地の現場で余ったものを格安で譲り受けたそうで、モザイクのように色とりどりでした。
2月には、開口部のサッシやドアの取り付け、外部の壁の下地張りが行われました。ここで私は一生忘れられない大失敗をしたのです。
作業分担を決める際、周囲の人が何となく遠慮した結果か、大した実力も無い私が玄関ドアの取り付けをすることになりました。もちろん、大工の棟梁が一人付いて、共に作業をしてくれましたが。両側の柱にドアの枠を当て嵌めて固定し、ネジをインパクトドライバーで締めていきます。ドアの開け閉めも問題なく、完成と喜んだのも束の間、外から「あれー?曲がってない?」の声が。外壁の下地張りをしていた人達が、ドアの所まで来て垂直にならない事に気づいたのでした。
大工の棟梁は、私が錘を垂らして行う垂直の確認をしたものと思い込んでいたようです。とても恥ずかしい事ですが、ドアは既にガッチリと取り付けられていて、やり直すという訳にはいきません。その結果、ドアの横の板は上下で5ミリほど幅が違う、台形になりました。
みんなで力を合わせて建てた小屋のドアを、傾けて付けてしまった私、申し訳なさに頭を下げ続けましたが、周囲の人々は優しく、誰も私を責めませんでした。
基本の手順を確認し、もれの無いように実行することがいかに大切か、私はそれを身に染みて感じました。また、もしお客様から請け負った物件なら、棟梁はこんな見落としをすることは絶対に無かったでしょう。慣れや緊張感の薄さは油断を引き起こすという事も、決して忘れまいと思いました。
3月の上旬は別の古民家の調査、下旬には外壁の板張りや内部の壁の下地張り、4月には左官工事です。活動記録では竹木舞(たけこまい)を作ったはずなのですが、記憶に無いので、不参加だったか、チームで分かれて作業したのかもしれません。覚えているのは左官屋さんの指導を受けて珪藻土を練り、手分けして壁に塗ったことです。これはとても楽しい仕事で、自分の担当範囲を終わっても、更にやりたくて残りの壁を塗らせてもらった、唯一の作業でした。
6月の内部造作を経て、7月に最後の左官工事を終え、10か月に及んだ体験塾は終了しました。ここには大工さんの他にも、設計・左官・建具・畳・電気設備といった多くの専門家の方が関わり、指導してくれていました。家を建てる際に必要な、様々な仕事や手順を、浅くとも一通り体験できた事は、本当に貴重な体験でした。
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