内部の虫食いを立木の段階で目視判定できるのか?その問いに対して、ある男性は明確に「YES」と答えた。「伐ってみなければわからない」が常識のようにまかり通る林業・木材業界の中で、ここまで心強い回答を聞いたのは初めてだ。しかしそのためには何十年という経験が必要なのではないかと問うと、そんな事はない、知っていれば誰でもわかると言う。実際に彼はそれを、講座を受け持つ林業大学校で教えているそうだ。
樹木は表皮の下の部分が育っていくので、過去の枝打ちの痕も、風の圧力で繊維が切れた部分も、全て表面に記録が残っていく。雪で折れた枝の元から虫が内部に入り込む、そんな痕跡も、知っていれば判別がつくと言う。もちろん、表皮が剥がれ落ちて無くなることもあるから100%という訳にはいかないが、その男性の会社では、管理を請け負う山のどの地域にその虫害が発生しているのかを調べ、しっかり管理しているそうだ。8mの高さに腐れがあると分かっていれば、その部分を外して造材すれば、使える部分を無駄にしない。
そんな事が可能なのは、間伐の時に伐った材を自ら製材し、その材質を確かめて詳細に記録しているからだ。確かに、目視だけでは見落としがあるとしても、間伐をその林分のサンプル調査として活用すれば、色や目の詰まり具合など、求める材が何年後にどこで採れるのかを正確に知ることができる。
しかし現実には、間伐でも皆伐でも、出荷した木材の品質がどうだったのか、製材所から生産者や山主にフィードバックされることはほとんど無い。中身がわからない状態で買うのだから、製材所は使えない材が混じっているリスク分を仕入れ価格から差し引いて買うしかない。冒頭の男性に言わせれば、虫の害が見抜けないというのは、林業側に自らの製品の品質保証をしようとする意識が欠けているからだ。自前の製材所が無くても、出荷先から材質に関する情報を戻してもらうことは可能だ。そのコストは、たっぷり補助金をもらっている林業側が負うべきだと。
私の目指す森林直販は、資源データと建築の設計図書を連携させ、地域の木造需要を極力地域材で満たすことにより、木材を高く買い、森林の維持管理を可能にするものだ。高く買うためには、木材の品質管理が大前提となるが、それを実現する方法に不安があった。リモートセンシング秘術を更に高め、製材所との連携で山の資源の質まで含めた管理をする、それに挑戦する企業・若者を支援すればいい。未来の森林を透視する、そんなサーチライトを手にした気分になった。
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