木材が日本の食料自給率改善に役立つ?そんな記事が新聞の夕刊に掲載されていた。日本の畜産飼料は75%が海外からの輸入に頼っていて、国はその割合を増やそうとしているが、簡単ではないようだ。海外産の飼料は穀物相場や為替変動に左右され、新型コロナで世界の物流が混乱した際も、かさばる割に価格の安い乾牧草が嫌われて輸入が滞った。安定供給と価格変動への対応のためにも飼料用作物の栽培が推奨されているが、農家の高齢化や採算の厳しさが足かせになっている。
そんな畜産飼料を、ペーパーレス化で需要の先細りに悩む製紙会社が生産するようになった。記事によれば、日本製紙の宮城県岩沼工場では、木材チップを煮詰めて繊維を取り出したパルプを、牛・ヤギ・ヒツジなどの反芻動物向けの飼料として販売しているそうだ。木材や牧草には、リグニンという、素材を固める糊のような成分が含まれていて、家畜は半分程度しか栄養を摂取できない。しかしパルプは生産過程でリグニンを取り除いているため、97%を消化でき、効率の良いエネルギー源になる。
興味深いのは、導入した牧場の専務が、「乳脂肪分と乳量が上がり、繁殖成績も良くなった」と話していることだ。牛乳は一定の脂肪分を保たないとメーカーが引き取らないか、安くなってしまうので、トウモロコシや大豆など輸入穀物が主体の配合飼料に頼らざるを得ない。しかし、国産木材のパルプで同様の効果が見込めるなら、一定程度の置き換えが可能になるだろう。
令和3年の、燃料用を除くチップ向けの原木供給は434万㎥で、6割が針葉樹、4割が広葉樹だ。日本製紙の今年度の供給目標は5,000トンだそうで、輸入飼料はトウモロコシだけでも毎年1,000万トン以上なので、全体から見ればごくわずかな量に過ぎない。それでも、木材の用途拡大と食料安全保障が結びつく、明るい話題ではないだろうか。
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