沖縄で、首里城正殿の復元に向け、柱を立てる作業が始まった。この柱のうち2本は長野県駒ケ根市の木材だそうだ。生産したのは、補助金に頼らない経営で地元では有名な会社である。以前社長に話を伺った時、木は育つのに長い時間がかかるのだから、安易には伐りたくない、高く売れる木を選んで周囲の残存木に傷を付けずに集荷するため、架線集材の技術を磨いてきたと仰っていた。木を見る目と集材技術、そして高く買ってくれる販路の確保で、制約の多い補助金を使わずに黒字経営を続けている。
架線集材というのは、道の無い急峻な山で、太い木の幹やタワーを備えた重機などの間にワイヤーロープを張り、簡易的なロープウエイのように木を吊るして集積場まで運ぶ方法だ。間伐や択伐では、伐採・搬出時に周囲の木を傷付け、価値を損なわせてしまうことがあるが、架線集材をうまく活用すれば、木を空中に回収するので、そのリスクがほとんど無いそうだ。動画を見せて頂くと、森の真ん中で樹冠がモコモコと動いたかと思うと、次の瞬間に枝葉を付けた大きな木がポンと空中に跳ね上がり、ゆっくりと画面を横切って運ばれていく。出した木は無駄を出さずにとことん利用する。
良い木だけを伐るのは、山を荒らすと言われ嫌われると聞いたことがあったので、その質問をぶつけてみた。「良い木を全部伐る訳ではないし、残った木の価値が上がるように考えて伐っている。高く売れる木があればその分山主さんに多くお金を返せるから双方がハッピーだ」とのことだった。年に1~2本は、直径1mを超える大木の伐倒もするそうだ。
比較的長伐期の施業ができる山だから成り立つ手法で、この社長のような木を見る目を養うのは簡単ではない。それでも、多くの従業員が技術を身に着け、後に続こうと研鑽を積んでいる。いつか復元された首里城を彼らが訪れたら、そこに自分達の伐った木が使われていることを誇らしく思うだろう。夢のある林業に従事する若い人達が羨ましくなった。
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