林業について、当事者に詳しく話を聞き、具体的な事例を書くようになってから、厳しくもありがたいご意見を頂くことが増えた。書籍にも書いたとおり、森林や林業に関心を持って全国を歩いた16年間、私は物見遊山の客に過ぎなかったと改めて思う。観光地を巡るように、紹介された事業者さんの話を聞いて、それを鵜吞みにしていたからだ。
林業政策が悪い、という話も良く聞くが、どう考えたらいいのだろうか。
以前、「入門 公共政策学」という本を読んだ。政策の決定には、「原子力ムラ」のようにある分野に存在する閉鎖的なコミュニティ「政策共同体」による影響が大きく働く場合がある。木材は食べ物ではないので、農業や漁業に比べ一般の国民の利害から少し距離があり、林業は木材業界や建築業界といった経済規模の大きい産業の声に押されてきた面があるように思う。その分、割に合わない部分は補助金で賄うという餌付けをされ、保護と引き換えに産業としての自立を失ってきたのかもしれない。しかしその方が都合の良い人達も多く、既に長い期間定着し、森林の維持に貢献もしている。
あちらを立てればこちらが立たない。社会の問題は複雑で、何かを変えようと思えば必ず抵抗が起きる。それを実行できるかどうかは、「社会的受容性」の醸成にかかっている。トラック運転手の働き方改革のように、値上げや利便性の低下があっても社会がそれを受け入れる雰囲気を作ることだ。日本の林政に問題があり、大きな改革が必要だとするなら、それを国民的な関心事に引き上げて味方を増やすのが一番の近道だ。花粉という本筋を外れた入口からでも、大量伐採の是非や今後の森林と日本人の関係について議論する輪に、多くの人が入ってきてくれたらと思う。
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