文月ブログ

宝物の家

木造住宅の価値とはどういうものだろう?自分がもし施主だったら、美しい木目を眺め、木の香りに癒されたい。動線を考え抜いた使いやすい間取り、暑さ寒さに悩まされない高断熱、椅子にかけた時に目に入る全てが調和して心地よく、人を招けば共に楽しみ、外から帰るたびに安心感と喜びに包まれる。そんな家が自分の経済力の範囲内で手に入れば最高だろう。
 5年前に早稲田大学で行った大型パネルの公開実験、その時に立てた家は今、千葉県旭市に移築され、工務店のモデルハウスになっている。有名な建築家の細部に至る拘りが、地元の住民には中々理解されないとこぼしながら、工務店の社長にとって、きっとこの家は宝物なのだ。
 年月と共に少しずつ飴色に変化していく梁や壁板。一度組み立てたものを分解して移築したのに、建具はわずかなゆるみもなく滑らかに動き、吸い付くように締まる。
 歳月を重ねることが、劣化ではなく時に磨かれることだと教えてくれる、そんな家と共に生きられたら、人生はどこまでも艶やかで、味わい深いものになるに違いない。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP