文月ブログ

建築業界が気付き始めた国産材リスク

先日、FSCジャパンが主催するステークホルダーミーティングに参加したが、120人もの方が来られていて驚いた。最近大手企業が、国産材の調達にあたり、持続可能な資源管理がされているかどうかを厳しくチェックすると表明するなど、国産材に潜む環境破壊リスクが広く認知されるようになってきた。森林認証の木材なら、企業がお金をかけてリスクを確認する必要が無い。再造林率が3~4割に過ぎないのに、国産材さえ使えばエコだと胸を張る企業の姿に何度歯がゆさを覚えたことか、それがようやく変わってきた証なのだろう。
嬉しかったのは、RCのビルを建てているディベロッパーも、コンクリートの型枠に使われる木材が東南アジアでもリスクの高い地域から来ている事に危機感を持ち、認証材か、サプライチェーンを把握できる国産に切り替えようと動いているのを知った事だ。彼らは一昨年から業界他社にも声をかけ、50社ほどの組織を作って解決策を探っている。調べてみてわかったのは、木材を市場で買えばトレーサビリティは切れ、伐採後の再造林がされているかどうかを調べるのは至難の技だという事。それに対処するには、市場を通さず木材を山から直接買い付けるしかない。そうして山にアプローチしてみると、昔に比べ木材価格は低下し、日本の小規模な林業では再造林費用の捻出が難しいと言われたそうだ。そこで彼らは、リスクの無い原材料を入手するためなら、再造林や育林の費用を出すと明言した。それはつまり、これまで認証取得や維持にかかるコストを価格に転嫁できないと苦しんできた認証材が、企業のリスク回避コストに見合う分、高く売れる可能性が出てきた事を意味する。それに気づいた多くの企業が、ミーティングに担当者を送り込んできたのだろう。
しかし、環境が変わってもすぐにFSC材が多く流通するようになるかというとそうはいかない。FSCは長く「儲からない」とされてきたため、認証林の面積は広がらず、生産される材の多くは自家消費の範囲に留まってきた。認証マークをつけるためには、素材生産事業者や製材所もCOC認証を取得している必要があるが、認証維持コストに見合うメリットが無いとやめてしまった事業者も多く、そうした場合は一般材として出荷するしかない。認証材を使いたい人も、どこに頼めば買えるのかわからないと嘆いているのが現状だ。
課題はあるが、需要が大きくなればそこには投資の機会が生まれる。これまでFSCジャパンは、FM認証取得者がどんな樹種の材をどの程度供給できるのかを全く把握していなかったが、参考数値として公開できるよう準備を進めている。利用拡大を推進するなら、COC認証に関しても、事業者一覧だけでなく、地域や業態、生産量などの情報を整備していく必要があるだろう。
今回の動きは認証材に留まらず、真面目に再造林をしてきた事業者にとって福音になる。木材はトレーサビリティへの関心が薄く、これまでは、山の健全性を損なうような荒っぽい施業をする事業者の材も、真剣に良い山を作ろうとする人の材も、市場では同じ土俵で闘うしかなかった。
繰り返しになるが、国産材の再造林率は3~4割だと林野庁も認めている。使えば使うほどはげ山を増やしている現状、再造林・育林コストを考慮しない山から供給される木材を使うリスクに、建築業界がようやく気付き、向き合い始めた事を歓迎したい。EUDRやTNFDなど、外部からの圧力のせいであっても構わない。ようやくわかってくれたと目を細め、山が笑顔を見せる春が待ち遠しい。

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