日本の植物の成長力は凄まじい。
近所の庭を丈高い雑草が覆っている。春先には綺麗に片付いていた場所は、わずか数か月で人を寄せ付けない草の楽園と化した。適度な雨量に季節外れの強烈な日射し。再び刈られる前に実をつけて熟成させ、周囲に蒔き散らそうと狂奔する草の勢いは、見ていて胸苦しさを覚えるほどだ。
昔ボランティアをしていた箱根には船見岩という場所があり、芦ノ湖を渡る軍船の監視をしていたらしい。しかし定期的に樹木を伐採しないと、視界がすぐに閉ざされる。樹木の成長スピードは一般の人が思うより遥かに早い。昔の人も苦労して展望を守っていたのだと思う。
スギやヒノキは、そのみなぎる成長のエネルギーを、天に向かって真っすぐ伸びるために使う。大きく枝を横に張り出し、直材が取りにくい広葉樹とは違い、建築の素材として扱い易く、伐採の機械化も容易だ。苗木の間だけ周囲の雑草を刈ってやれば、旺盛な自然のエネルギーを、人の暮らしを支えるものに変換してくれる。
暑熱と増加するCO2、そこから生まれる膨大なエネルギーは、再造林しなければ草や笹・竹の繁茂を促すだけだ。人が成長をコントロールし、価値を生み出せる針葉樹との共生は、日本列島のポテンシャルを最大限生かすために欠かせないと思う。
拡大造林とその後の放置という不幸な時代にも、スギやヒノキはひたすら育ち続けてきた。物言わぬ彼らとのパートナーシップを再構築できたなら、硬直し暗くなった日本中の森に新しい光が差し、清い水が流れ始めるような気がする。それは見失ったバトンを取り戻し、手渡す世代を、未来を見つけるきっかけになるだろう。
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