文月ブログ

地球温暖化を乗り越える

例年なら梅雨空のもと雨が降り続く時期に、連日35度前後の猛暑が続く。ここ数年の夏の暑さは明らかにこれまでの人生で経験してきたものとは異質だと感じる。地球温暖化を実感せずにいられない状況なのに、この事実を嘘だとか陰謀だと断じる人々の声が、最近確実に勢いを増しているらしい。その代表格がトランプ大統領で、その取り巻きをはじめとする多くの人々が気候危機を否定し、これまでの対策をひっくり返そうとしている。
科学的な根拠が全く無いかと言うとそうでもなく、私自身、過去に神奈川県温泉地学研究所の研究員が、地球温暖化は嘘っぱちだと明言するのを聞いた事がある。福井県の水月湖には7万年分の気象が反映された年縞(ねんこう)という堆積物の層があり、その分析から、過去にはわずか1年~3年で7度もの平均気温の上昇が起きたことがわかるそうだ。地学の研究者はそのような事実を知っているので、平均気温の急上昇が人間の社会活動の結果だと決めつけるのに抵抗があるのだろう。
国連の気候変動に関する政府間パネルもその事実は踏まえた上で、それでも人間の活動が気候に影響を与えるリスクを無視するのは危険だと警鐘を鳴らし、少しでも回避につながる構造改革を各国に促しているのだと思う。
今から11600年前頃、ある時を境に地球の平均気温は突然7度も上昇し、氷期が終わりを告げた。その激しさは想像を絶するもので、海面の上昇により、多くの文明が海に沈んだことだろう。ノアの箱舟の大洪水や、一夜にして海中に没したと言うアトランティスの物語などは、その時の悲劇の記憶だという説もある。
森林も動植物も人間も、その危機を乗り越えて現在まで生き延びてきた。その事実は私を勇気づけてくれる。迫って来る海から逃げ、人も動物もより高い場所へ、もしくは高緯度帯に向けて移動を続けただろう。平均気温7度は北海道と福岡の気温差に相当する。植生も採取できる貝も異なり、これまで積み重ねた、生きていくための知恵の多くは意味を失った。移動した場所にもともと住む人々がいれば、生活圏を巡る戦いも起きただろう。
樹木は日光や水を奪い合うように見えて、実は互いに助け合う生存戦略を取っている。森の木々は、その根に棲みつく菌類のネットワークを通じて、より暑い環境で成育を続けるために何をしたらいいか、何ができるかを共有したのではないだろうか。幹や枝で作り出す組織を変化させたり、弱った個体に栄養素を分配したりして、枯死や絶滅を免れるためにできる限りの力を尽くしただろう。
今地球上を覆っている生き物は皆、そうした生き残るための闘いの勝者の子孫だ。
一見乱暴に見える反対者の意見にも耳を傾けながら、樹木の生存戦略に学び、菌根菌のように柔軟で強靭なネットワークでつながり、弱肉強食ではなく共存総有の生活圏を作っていく、私はそんな暮らしを山間地域で実現できたらと願っている。

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