林業現場のドローンは、計測よりもまず運搬で活躍するかもしれない。最近、林業ICTの進捗について様々な方にヒアリングさせて頂いているが、ドローンで取得した映像やレーザデータを森林管理に生かす道はまだ険しいようだ。比較的規模の大きい森林組合や林業事業体、小さくてもICTに関心のある事業者は、普通にドローンを所有している。しかし、使いこなせているかと問われると、ほとんどの場合、うーんと言って目線が宙に浮いてしまう。測量や材積推定の結果が人手をかけた場合に比べてどうなのか、精度検証を続けているという話が多く、その次の実用化には中々進んでいかない印象だ。データ運用にも技術の習得や経験値の累積が必要で、今はまだコップの水が十分に溜まっていない状態なのかもしれない。
一方で、運搬用のドローンは着実に普及し始めたようだ。一度に運べる重量は15㎏~25㎏程度でも、人が背負って急な斜面を登る負担を考えれば、有用さは明白だ。近年は苗木だけでなく、シカ柵用の資材を運び上げる必要もあり、再造林を妨げる要因の一つになっていた。それもドローンを何度も往復させることで楽に運べる。
一定以上の大きさのドローンを操作し、視認できる範囲を超えて飛行させるには国家資格が必要だ。「航空法」をはじめ、その他にも「小型無人機等飛行禁止法」や「電波法」といった法律を学び、機器のメンテナンス等の知識を持つ必要がある。約40万円かかる講習費用の半分が補助される制度もあり、講習の予約はかなり先まで埋まっているらしい。もちろん、林業だけでなく建設・土木・物流など多くの産業で必要性が増しているのだろう。
伐採跡地への再造林は3~4割と言われていたが、最近少しずつ増えているという嬉しい話も聞く。ある森林組合では、令和2年度に80haだった植栽面積が、令和3年に100ha、昨年度は200ha近くに拡大した。運搬用ドローンを試験導入しているそうで、造林作業員の力強い助っ人になっているに違いない。
森林計測に使うドローンの活用も、関係者のたゆまぬ努力という水滴を集め、ある時一気に溢れる瞬間を迎えることだろう。その水がデジタルの波として森林を浸し、その成長を助ける光景を見たいと思う。
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