2022年9月21日、千葉市稲毛区にあるモック㈱の大型パネル工場で、WOODx研究会の拡大会議が、工場視察を兼ねて行われました。
WOODx研究会は、ウッドステーションの塩地会長が呼びかけ、林業と建築のデータ連携を目指す大学教授や林業・木材事業者が集まる任意団体です。今回は、新設された大型パネル工場の見学を兼ね、事業連携を模索する電力事業者や商社、林業コンサルタント、メディアなど、様々な人達が参加して開催されました。
まず初めに、部材の製造から住宅の設計・販売にまで精通したE氏が、置いてある木材の説明から始め、丁寧に工場を案内してくれました。山長は紀州材をメインにしていますが、大型パネルは受注生産のため、施主の希望によっては外材を使用することもあります。珍しく梁にベイマツが使われていたのは、現在生産している物件が一般住宅ではなくグループホームだったためかもしれません。それでも柱はいつものように、目の詰まった山長ブランドのJAS材です。機械等級ではOKでも、更に目視で虫食いや割れのある材を除外する、山長の徹底した選木を経た柱は、大壁の中に隠れてしまうのがもったいない、見事なものです。
この工場では、紀州から届いたプレカット材を、大型パネルの生産順に従い、一枚分ずつピッキングします。それを工員が施工図を見ながら台に並べ、何度も縦横・対角線の寸法を測りながら釘を打って組み立てていきます。無理な姿勢を余技なくされる現場施工と違い、重力に逆らわない安定した作業環境は、高い施工精度を生み出します。工員の一人は小柄な女性ですが、就労してわずか1か月半でも、熟練した親方の指導を受けながら滞りなく作業を進めています。働く人に優しい環境は、高齢者や女性にも門戸を広げていくでしょう。
柱や梁など構造材の上には、壁になる面材や防水シートなども取り付けられていきます。そうして組み上がったパネルは立て起こし機で垂直に立てられ、その状態で作業する方が効率の良い断熱材の施工や、窓のはめ込みなどが行われます。このラインでは、工員の乗る台を簡単に上下させられるので、最も作業しやすい高さに合わせることで、確実な作業が可能になります。今回初めて、窓の取り付けを近くで見学しましたが、窓枠の下の部分に専用のパッキンを何枚も張り付けるなど、細かい準備が必要なことに驚きました。しかも、この作業はサッシのメーカーや種類によっても異なり、施工者泣かせの工程だそうです。施工に一か月以上かかる現場作業では、一人の大工さんが経験できる棟数はそう多くありませんが、大型パネル工場では月に3~5棟の組み立てができますから、経験値も上がります。それも大型パネル化する大きなメリットだと聞きました。
完成したパネルは横にゆっくりとスライドさせ、移動に使う専用のラックに収納して固定します。そして上棟の日には低床トラックに積まれ、たった一日で「建物」になるのです。
今回は建築以外の業界からの参加者が多く、大型パネルの生産現場を直に見たことに大きな意義があったと、何人もの人から聞きました。百聞は一見に如かず、この言葉はネットに情報が溢れる現代でも、意味を失っていないのでしょう。林地のドローン計測と解析を行う会社の若き社長は、自分達が把握した樹木の情報が最終的につながる先を実際に見て、資料を読んでも掴みにくかった事をはっきりイメージできたと感慨深い様子でした。こうした出会いと学びの場をとおして、夢だったことが現実に近づいていくのでしょう。
次回は会議の内容についてお話します。
文月ブログ
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