夾竹桃(キョウチクトウ)の白やピンクの花弁が、夏の青空を背景に風に揺れる様子はいかにも爽やかです。名前の由来は、葉が竹の葉に、花が桃の花に似ていることからきているとか。しかし、夾竹桃には枝葉だけでなく根や果実を含む全ての部分に強い毒が含まれていて、うっかり触って口にすると中毒を起こして死ぬこともあるようです。実際に、折った枝を箸の代わりに使ったり、子供が間違って葉を食べてしまったりした事故が報告されています。とても綺麗な花ですが、切って花瓶に飾ることも、毒が溶け出すのでやめるべきだとされていて、相当強い毒性があるのでしょう。
全国の自治体が定めた「市の花」の一覧を見てみると、夾竹桃は広島市と鹿児島市で、市の花に指定されています。とても馴染みのある花なのに二つの市だけなのは、やはりその毒性が嫌われているのかもしれません。広島市のホームページによると、夾竹桃が選ばれたのは、原爆投下で75年は草木も生えないと言われた被爆地で、いち早く花を咲かせて多くの人を勇気付けた事によるそうです。燃えにくい木なので、激しい火炎の中でも生き残ったのかもしれません。鹿児島市のホームページでは、夾竹桃を市の花とした理由は、南国の日差しと青い空に似合う、夏を代表する花だからという理由のようです。
面白いことに、広島市と鹿児島市は「市の木」を楠としている点も共通しています。広島市では、原爆に耐えて「生き残ったクスノキは、いち早く生命をよみがえらせ、市民に生きる希望と復興への力を与えてくれました」と記載されています。鹿児島では、「常緑樹(南国的)で高木(雄大)となり、成長力(発展性)が旺盛であるとのことから、鹿児島市のシンボルとして制定」されたそうです。
以前のブログにも書きましたが、楠には医薬品として用いられる成分があり、それが昔、強心剤として使われ「カンフル剤」と呼ばれていました。更に、木材や枝葉から作られる樟脳には消炎鎮痛や防虫・防腐効果があり、江戸時代には薩摩藩などで盛んに作られ、輸出されていたそうです。鹿児島市の木となった背景には、そんな歴史も関係しているかもしれません。
夾竹桃と楠、この二つに共通しているのは、高い濃度の化学成分を含んでいることです。毒になるか薬になるかは、人がそれをどう用いるかによります。長く「毒にも薬にもならない人」だった私ですが、悪意を持って近づく者には毒を吐き、信頼を寄せる人々には薬となる言葉をかけられる人間になりたいと思います。
文月ブログ
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