参議院議員の任期は6年。それは本来、目先の物事にとらわれず長期的な課題に取り組むための制度だと思うが、今回の選挙では、本当にこの国に必要な議論がなされたようには思えなかった。人口の激減、全国的なインフラの劣化という確実にやって来る未来を踏まえて、その変化にどのように適応していくのかというグランドデザインの描き方を問うて欲しかったが、生活苦への対処や外国人に対する不安の声だけが大きく響いた。
インフラ維持や災害防止は自治体が中心になって対策を検討しているが、増え続ける課題と反比例するように若い人材は減っていく。職員の多くは、今のままでは到底追いつかないという不安を抱きながら奮闘しているのではないだろうか。
国の形を維持するためには、沿岸・山間部を問わず地方に人が住み続ける必要がある。食料安全保障の点からも、一次産業の担い手は最低限確保しなくてはいけない。そのためにはどんな技術革新が期待でき、促進政策の選択肢があり、費用対効果はどの程度か、政党やシンクタンクが提案を競い合えば良いのにと思う。大きな政府ではなく、民間の力を引き出す政府、未来デザインの選択肢とメリット・デメリットを示して国民に問う政党が欲しい。
例えば、戸建て住宅の着工件数は先細りの上、人手に頼っていた木拾いや積算作業が自動化されれば、数万~数十万人の住宅産業従事者が職を失うかもしれない。当人にとっては悲劇に見えるが、縮小する業界で冷遇されるより、もっと自分を必要としてくれる産業に移る方が生涯所得も生きがいも向上する可能性がある。そのような技術革新に注目し、産業間の労働力の移動を促すような政策を打つことができれば、労働人口の激減に対処していく一つのモデルになる。
山で働き、健全な森を維持する仕事をしている人達が、伐採した木を自ら製材加工し、住宅部品にまで組み上げて、地域で暮らし始めた若い家族に快適な住まいを提供する。数十年以内に必ず襲ってくる大規模災害に備えた、地域材を使った住宅備蓄生産が山間地域の経済を支える。信託化の進んだ山は人々に開放され、山菜・木の実・キノコなど自然の恵みを存分に味わえるので、都市で暮らす人々も週末に訪れる機会が増え、交流が活発になる。そんな未来のための知恵を競い合えたら、日本の森は必ず輝きを取り戻し、私達を優しく包み込んでくれると思う。
文月ブログ
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