文月ブログ

森林組合の多様性

森林組合は全国に607組織あって、それを束ねる全国森林組合連合会によると、2023年3月時点で所属する組合員の数は147万人、組合員や組合自体が所有する森林は1,047万ヘクタール、そして670万m3の木材を生産している。面積は全国の森林の約42%、そして2023年の国内の素材生産量が2,293万m3なので、そのうち約30%を生産したということのようだ。伐採作業は機械化がしやすく、補助金制度の充実もあって、民間事業者の生産量が森林組合を上回っているが、森林を伐採した後の再造林作業を担っているのは森林組合であることが多い。すぐお金になる伐採に比べ、跡地を整える地拵えや、防鹿ネットの設置、苗木の植え付け、真夏の雑草の刈り払いなど、機械化が難しく手間のかかるキツイ仕事をやりたがる事業者は少ないので、跡地をはげ山にしないために、森林組合がやむを得ずその役割を引き受けるケースが増えている。それでも全てをカバーするのは難しく、全国の伐採跡地の再造林率は3~4割だと林野庁も認めているくらいだ。再造林条例を制定し、県をあげて再造林率9割を目指す、宮崎県のような取り組みが増えて欲しいと思う。
一口に森林組合と言っても、実態は多様性に富んでいる。同じ業界内で組合と名がつくと、何か一定の幅に収まる組織のような気がするが、実際はそれこそ株式会社と同じように、規模も業態も様々だ。令和4年の林業白書では、森林組合の総事業取扱高の区分で、1億円未満の組合は17%、1億円~3億円が最も多くて35%、3億円~5億円、5億円~10億円がほぼ同じ20%程度で、10億円以上は9%、わずか54組合とされている。中には自ら製材工場を運営するなどして、100億円近い事業取扱高を誇る組合もある。
もちろん、取扱高が多いほど良いという単純な話ではなく、不利な環境の中でも尊い仕事をしている人達が沢山いる。東北のある組合は、20人程度の従業員で、搬出間伐を中心に、キャンプ場の指定管理者業務、薪の生産と宅配なども行いながら、役所に材工分離を働きかけて地域の公共建築物に地場産材をしっかり供給している。
甲信越のある組合は、路網密度が低いため、年の半分は道作りに労力を費やす。しかしそれが後の人達の作業を楽にするのだと、彼らはその仕事に誇りを持って取り組んでいる。
中部地方には、地域の山林の7割が広葉樹という状況の中、根曲がりした針葉樹を伐採搬出しながら、利用できる部分の少ない広葉樹を少しでも生かそうと工夫する組合もある。
スギだけをとってみても、東北では80年でようやく丁度良い太さになる場所もあれば、大分や宮崎では50年を過ぎると手に負えないほど太くなり、伐り出すコストが売上を上回るリスクが増える。
実は、森林組合の人達自身が、自分の地域以外の実情を知らないことも珍しくない。伐ったら植えるのは当たり前で、そうでない地域があることを知らなかった、という言葉を最近耳にしたほどだ。
森林情報のデジタル化やオープン化による新しい試みを進めたいのに、頭の固い上層部が認めない組合の話は良く聞くが、逆に危機感を持つ組合長が革新的な構想を打ち出し、部下達が悩みながら実現に向けて動き出す組合もある。
私がこれを書いているのは、森林組合が地域によって、個別の事情によっていかに多様かを知り、一言で決めつけないよう自戒するため、そして何より、彼らの多くが、自分達が地域の森林の守り手であるという自覚と誇りを持って仕事をしていることを知って欲しいと思うからだ。それでも彼らに足りないものがあるとしたら、それを地域の行政や民間経営者が積極的に関わることで補ってもらえないだろうか。
この30年あまりで事業収益を6倍にした佐伯広域森林組合、その奇跡のような成長に手を貸した行政官やビジネスマンの存在を思うにつけ、私はそんな希望を抱かずにいられない。

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