文月ブログ

植える責任・使う責任

熊本県のある村では、伐採届に森林組合の捺印が必要だ。村はそうすることによって、素材生産事業者が誰のどの山を伐るのか、森林組合が把握できるようにしている。再造林するかどうかは山主の判断だが、一般的な素材生産事業者は木を伐採するだけで、後の面倒は見ない。それでも、森林組合がその伐採に関する情報を得られれば、所有者に連絡して再造林を勧め、作業の発注や補助金申請を代行することが可能になる。
もちろん、この方法が有効かどうかは、地域の事情によって異なる。自ら再造林まで行う林業会社があるとしたら、森林組合に都度印鑑をもらいに行くなど勘弁して欲しいだろう。森林組合の中には管理区域が複数の市町村にまたがっている組織も多く、全ての自治体の協力を取り付けるのは難しいかもしれない。
全国で、主伐(一定範囲の木を全て伐り収支を確定させる行為)後の再造林率は3~4割、これは林野庁も認める数字だ。100%植える必要は無いとしても、今後更に国産材利用が進み、この状態が改善されなければ、50年後には使える木が無くなってしまう。
先日開催された木材利用のシンポジウムで、ある住宅メーカーは自社の宣伝や開発した木造建築の利点について延々と話し、課題は価格だと言った。そこには、調達している木材が再生可能なものかどうかを問う姿勢はまるで感じられない。いや実は知っているのに、そこに踏み込めば価格を押し上げるから黙っているのだということが透けて見えた。
最近私が話を聞いた12の森林組合は、いずれも懸命に再造林に取り組んでいる。そして他の事業者が伐った場所にも、できるだけ植えようと努力を重ねている。嬉しいのは、特に九州で県や自治体が伐採跡地の放置に厳しくなり、山主や素材生産事業者の間でも再造林の意識が高まっていると複数の人から聞いたことだ。
山側は資源管理に動きだしている。建築側にも、それに相応しい責任を持って欲しい。木材調達の際に、単に国産材かどうかだけでなく、森林の維持管理に配慮されたものかどうかを峻別する、それを木材業界に要求してもらえたらと思う。マーケットを変えるのはユーザーの声だ。私は更にその先の、施主や住宅の借り手に届く発信を目指していく。

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