茨城県にある広大な物流倉庫の一画で、応急仮設にもなる木造のモバイル住宅が建設されると聞き、頼み込んで何度か見学させて頂いた。国産材100%、6.4m×2.1mのボックスユニットが4つ並んで、一軒の住宅を構成する。本来なら大型パネルにしてそれを組み立てれば安全性が高く、大工さんの負荷を減らせたのだろうが、今回はあまりに時間が無く、直接組み上げることになったらしい。なにせ正式に話が決まったのが5月の始め、設計士さんは休日返上、木材調達とプレカットはたまたまGW中に担当者が電話に出てくれた会社に依頼、断熱材から住設機器までナフサショックで無い無い尽くしの住宅資材を関係者が必死でかき集め、何とか間に合わせたと聞く。遠い茨城の倉庫を借りて、たった2週間で完成させるという突貫工事だ。
巨大な倉庫の入り口をくぐり、家庭用品の入った段ボールがうず高く積まれたスペースを50メートルも進むと、一番奥の区画に不釣り合いな木材の柱が立ち並んで、ピンを打つ音が響き渡っている。倉庫の床にブルーシートと合板を重ねてその上に土台が組まれており、柱の上に梁を架ける作業が行われていた。最初はスカスカだった空間が、みるみるうちに木材の殿堂になっていくのは胸踊る光景だ。10人もの大工さんが、ほとんど会話をしないのに手際よく上棟していけるのは、番付にしたがって組めばいいという在来木造の知恵のおかげなのだろう。
初日は敷地の養生から始まり、木材に金物を取り付ける作業をして土台を組んだようだ。二日目は柱や梁など構造材を全て組み終え、三日目には屋根に垂木を打って断熱材や野地板を嵌め込むと同時に、羽柄材の取り付けや、壁に断熱材を埋め込み、耐力面材(モイス)を貼る作業が始まった。奥にある扉の外で、二人の大工さんが断熱材や合板を切断する作業をする一方、屋内の通路に面したスペースでは、脚立に渡した木材とビニールシートで即席のモイス切断コーナーが作られていた。とにかく時間が無いので、大工さんの頭数をかけてその場で加工していくスタイルだ。四日目には窓やドアが取り付けられ、外壁にぐるりと防水紙が貼られて内部では電気工事が始まった。そして五日目は、防水紙の上に通気穴の開いた横胴縁を打つ作業や、内部造作、水切りの設置などを7人の大工さんが手分けして行っていた。住宅の内部では、昨日に続き電気の配線工事が行われ、他の人他が昼食休憩を取る間も技師さんは手を休める気配がない。聞けば、通常なら一か所の分電盤から直接配線するのだが、この建物はユニットごとに分ける必要があるため倍近い時間がかかるのだそうだ。改めて良く見ると、4つに分解して運ぶため、軒先の細かな木組みも胴縁も、全て一本の長い木材ではなくユニットの切れ目で分割されている。当たり前の事だが、モバイルユニットではそうした手間が余計にかかるのだと知る。この日は専門業者がユニットバスの設置も行っていて、大工さん達は配線が終わった場所から野縁を取り付けて天井を張り、来週にかけて床張り、次に壁の石膏ボード、と作業を進めていくそうだ。
建築を間近で見ていると、物流が住宅建設の肝だというのが良くわかる。現場施工でも同じだが、建築資材を置くスペースは限られ、必要な材料が必要な時に届いて、それが無くなるタイミングで次の材料が搬入されなければ全体の作業が進まない。最初は構造材、次に断熱材や合板、耐力面材、羽柄材、そして石膏ボード、その次は床材や外壁材、その合間にドアや窓、ユニットバス、キッチンなども搬入されてくる。正確な物流が狭小地での住宅建設を支えていることを実感できた。来週の完成まで見届けた後、全体をとおして感じた事をまとめようと思う。様々な学び、気付き、可能性に満ちた木造モバイルユニットの行く末を、希望を持って見守りたい。
文月ブログ
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