「森林組合が地域の森を守る。」ごく当たり前のことと思うかもしれないが、私が森林・林業にのめり込んだ16年前、「森林組合はどこもやる気がなくてダメ」という話をどれほど聞いただろう。「補助金がもらえる範囲で同じ仕事をするだけ。」「上層部が旧態依然で新しいことをやろうとしても潰される。」「やる気を持って入った人ほどすぐ辞める。」実際に森林組合に勤めていた人からもそんな話を聞き、私はすっかり信じ込んでいた。
世間の見る目も厳しかったらしい。ある人は取引先の担当者に、「たかが森林組合が」と言われたことを今も決して忘れないと口にする。
しかし月日が流れ、私は最近、自分の知識がいかに浅いか、アップデートされていないかを思い知るようになった。話を聞くほど、全国に、素晴らしい経営をする森林組合が沢山ある、それは嬉しい驚きで、大きな希望を与えてくれる。
ウッドショックの際、市場が求めているのに国産材の生産が増えない理由は、補助金の予算や手間、それに乾燥機のキャパシティがネックだと言われていた。今回話を聞いてみると、再造林をしっかりやっている組合は、伐採量を増やせても造林・育林の人手が確保できないと慎重だったようだ。目の前の儲けよりも、地域資源への責任を重視する姿勢に頭が下がる。
同時に、ウッドショックとコロナ禍は森林組合の人々の心理や行動に大きな影響を与えたとも思う。一時的とは言え財政的な余力が生まれ、恒常的な人手不足への対処としてICTを導入する機運が高まっている。技術的にも、新興企業が参入し、資源調査や解析、カーボンクレジットの創出など多様なサービスで凌ぎを削るようになった。
私が話を聞いたのは主に先頭を走る組織なのかもしれないが、全国に約600ある森林組合が彼らに続いてくれるよう、精一杯エールを送りたいと思う。
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