「自分の仕事は自然をちょっと手助けすること」朝から印象深い言葉を聞いた。石川県から委託を受けて、白山の登山道を整備している男性の話だ。丈の高い草や笹が茂る登山道を何とかしたいと、最初の2~3年はひたすら草を刈っていた。白山の道は自分が守る、と気負っていたが、そのうちある事に気づいた。笹を刈って登山道の脇に日が射すようになると、小さな花を咲かせる「シラタマノキ」や「ゴゼンタチバナ」など背の低い植物が一斉に顔を出し、地面を覆っていく。するとそこには雑草が生えにくくなる。ただ草を刈るだけの作業は苦しいが、その後に多くの花々が咲く姿を見ると、彼らに支えられる自分と、その仕事が小さく見えてきたと言う。
林業も正にそんな仕事だろう。人間にとって有用な木が早く真っすぐに育つように、周りの草を刈り、巻き付くツルを切り、混んできたら間伐して空間を開けてやる。木を育てているのは太陽と山に降る雨だ。人間ができるのは光の調節だけだという、ある林業家さんの言葉を思い出す。そうやって長い時間をかけて、しなやかで強く、美しい木目と香しさを持った木が育っていく。
8月11日は山の日。日本中の山に、多くの人が足を踏み入れているだろう。手つかずに見える自然が、外来植物の駆除など人の手で守られている場合も多い。登る道も、その目に映る木々も花々も、誰かが自然に手を貸すことで成り立っているかもしれない。それに気づく人が少しでもいてくれたらいいなと思う。
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