従来の資本主義は、果てしなく横に広がる経済です。最安値の原料を探して大量に作り、欲しい顧客がいればどこまでも運びます。それがイノベーションを生み、圧倒的な富の源泉となってきました。何万点もの複雑な部品を組みたてる自動車産業や、数百万通りの実験やデータ解析から有効な成分を作り出す製薬など、その手法が適した産業はもちろんあります。
しかし、住宅はもともと、地元の材を使い、大工が建てていたのです。そのような、広域からの材料調達が本当に必要でしょうか。本来、立脚すべきなのは地域の資源の量と質なのです。
「森林連結経営」は、建築データのデジタル化により、裏山の資源を宝に変えます。そして、製品にならない部分は、おが粉などの畜産向けを除き、木質バイオマスとして地域の熱源や電源を下支えするでしょう。しかしその量の上限はあくまでも「持続可能な森林の資源量」です。その地域で生き続けようとする人々は、互いの利益を調整し、事情を汲みながら助け合おうとするはずです。古くから山村の住民がそうしてきたように。
2022年3月現在、日本全国には100基を超える大型バイオマス発電所が認可されています。ほとんどは海外からヤシ殻(PKS)などを輸入して燃料とするため、海岸近くに計画されていますが、円安や災害・紛争等で、輸入が止まったらどうなるでしょうか。森が製材品などにならず、直接燃料として燃やされることになれば、わずか数年で日本はハゲ山だらけになると、林野庁関係者も危惧していました。
一方、山から出る未利用材などを想定した内陸部の発電所は、期待した量の残材を集められずに、停止している施設も少なくないと聞きます。山に資源は大量にあっても、所有者や境界線の不明な場所が多く、すぐ伐採できるとは限りません。所有者の同意を得ても、補助金の出る範囲内でしか施業せず、作業員の高齢化も進む中、一気に生産量を上げることは難しいのです。昨夏のウッドショックを見ても、林業側が市場の要求に速やかに応えられる体制でないことは明らかです。
しかし、大型パネル工場の設置で原木を高く売れるからと、再造林の手当もせず伐採量を増やすのはもっての外です。「森林連結経営」で重要なポイントは、森林の健全性の維持と、製材品を中心とした利益の最大化による、関係者への十分な利益配分、その結果として増産されるバイオマス燃料、その均衡点を探りながら事業を継続していくことだからです。再造林や間伐による、適正な森林の維持管理を、必ず伴わなくてはいけません。持続可能な森林経営の実践を第三者機関が審査している、FSCのような森林認証を、高価格での原木買い取りの条件とすることも方法の一つでしょう。
地域の森林資源を全ての基礎とし、そこから得られる利益を最大化して、健全性を保ち続ける、その思考と行動様式こそ、地球という限られた資源の枠内でしか生きられない、私達人類に必要なものではないでしょうか。
しかし「信頼」などという曖昧な言葉だけで、複雑な事業を展開し、利益を配分できるのか、そこはまだ疑問を持たれるところでしょう。
明日に続きます。
文月ブログ
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